4/2016
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(出典:熊本大学大学院中西研究室)図11 Bio-Starのイメージレーションさせたフロート部の試作でした。 試作に当たっては,アスクネイチャージャパンからの提案も有り,中西教授のBio-Starと当校の持つ設計・加工・組み立て・調整の技術・技能とを融合させたモノづくり手法で取り組むことにしました。4.1 新モノづくりとは近年「3Dプリンタ」が急速に注目を集めていますが,その本質は,プリンタそのものではなく「デジタルデータから直接様々な造形物を作り出すこと」にあるといわれ,デジタル製造技術の発展を一気に加速する点にあると言われています。このデジタルデータから直接造形物を作り出すモノづくりが「新モノづくり」と言われるものです。4.2 「Bio-Star」とは「Bio-Star」とは,先にも述べたように人間の関節の軟骨と同様の仕組みを軸受けに使い,低摩擦,高効率のベアリング(軸受け)装置の事を言います。生体関節は,関節軟骨が摩擦面で関節液が潤滑油として働くことで摩擦係数が0.001〜0.01と非常に小さく70年以上にわたる耐久性があります。この機能・特性に学び中西教授が開発されたのが「Bio-Star」(Biomimetic System for Tidal power generation learned from Articular cartilageの略)と呼ばれるもので,特徴としてはオイルフリー防水機能付き軸受けです。図11は生体関節を模倣した「Bio-Star」のイメージ図です。図11の生体関節軟骨には親水性多孔質材-21-料を用いて,生体関節液には水溶性の潤滑液を用いています。この潤滑液は非ニュートン性を持っていて,幅広い作動領域で低摩擦・低摩耗を実現しています。4.3 フロート部の構成と試作フロート部の試作に当たってはコーディネートを地域連携室が行い,設計・製作は当校生産技術科の戸田講師とそのゼミ学生の総合製作実習の課題として取り組みました。以下に述べる試作過程や航行実験,そしてこれらについての考察は戸田講師からお聞きしたものをまとめたものです。フロート部は,浮力を得るフロートと車輪の回転力をスクリュに伝達する推進装置,自転車のハンドルを切ることによって進行方向を変えるかじ取り装置で構成しています。フロートは,安全性の確保と十分な浮力を得るために市販されている水上自転車のフロートを流用し,かじ取り装置はハンドルと連動させてスクリュ自体の方向を変えられるように工夫しました。自転車の脱着は,前後輪ともに自転車のハブシャフトを延長し,このシャフトに荷重がかかった時に食い込み勝手となるように加工してフロート側に取り付けた固定金具の溝に挿入する事とで容易に行う事が出来るようにしました。またペダルをこいだ時の車体の安定性を確保するためにパイプフレームの中央が支持できるような金具をフロート部に具備しました。今回の試作の最重要部となる推進部は,スクリュと,車輪の回転をスクリュに伝える駆動装置とで構成しました。スクリュの設計と製作については,使用するに適した形状・サイズの市販品を入手して荒い精度で計測しながら3DCADでモデリングし,そのデジタルデータを3Dプリンタに入力して造形するという手法をとりました。使用材料は,物性値が高いABS Plusを用い,中までぎっちり詰めるソリッドとして造形を行いました。「技能の伝承」と「新技術」3

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