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図2 歓喜に沸くメンバー達学ぶ地域社会づくりを目指したもので,私も呼びかけ人の一人として参加しておりました。当日行われた調印式にはバイオミミクリー研究所(米国),滋賀県立大学,近江八幡市,滋賀経済同友会,滋賀職業能力開発短期大学校等の八団体が出席して連携協定に調印し,当校からは当時の校長である室伏誠氏が調印書に署名を致しました。このように滋賀県ではアスクネイチャージャパンを中心に「自然に学び,自然を活かす」勉強会や研究会が多くの専門家を招き進められています。2.1 バイオミミクリーとはバイオミミクリー(Bio Mimicry)とは,生物の機能を模倣することで新しい技術を生み出す学問の事をいい,同じ意味を持つ言葉に「バイオミメティクス」いう言葉も有ります。生物を模倣して開発された代表的な例としては面ファスナーがあります。「引っ付き虫」と呼ばれるモナミの仲間の種子の構造であるかぎ状の針でひっつく仕組みを真似ていて,誰もが使ったことのあるポピュラーな製品です。また,自然を科学の眼で観て,人間にとって必要なものをリ・デザインする事によって地球環境負荷をとても小さくする事が出来る,まったく新しい暮らし方を提案しようとする技術が「ネイチャーテック」と言われるものです。例としては,建物をアリ塚のような構造にする事によって空調に使うエネルギーを従来の10%程度に抑える事に成功したジンバブエの複合商業施設などが有名です。これらからも判るように30数億年の進化を経た生物は,わずか数百年の歴史しか持たない近代科学技術が及ばない知恵や仕組みを持っています。しかもそれらは私達が現在抱えている環境やエネルギー,資源の問題を解決出来ると考えられる技術なのです。物理や化学の基礎研究における大きな発見は20世紀中に一段落し,現在は基礎理論における大きなブレークスルーは得られなくなったといわれています。この状況の中で生物模倣は原理面で製品や技術-17-のイノベーションを進める有効な手段となっていています。2.2 バイオミミクリーと私の関わり職業訓練指導員の私が何故バイオミミクリー等の研究会に参加していたのか?不思議の思われる方も多いと思います。それにはこんな経緯が有ります。私は,当校の電子技術科一期生の卒業研究(現:総合製作実習)の課題として「自前の制御システムを搭載した手作りソーラーカー」の開発を掲げ,何時かはオーストラリア大陸縦断3000kmレースに挑戦して完走したいという夢を学生やOB達と共有して活動を続けて来ました。その夢の実現までには7年間という長い歳月を要しましたが学生やOB達の頑張りと,開校して間もなく歴史も何の実績も無かった当校ソーラーカーチームの夢を実現させてやろうという地域の方々,地元の企業,事業主団体等々からの支援によってその夢は平成11年10月に叶えさせて頂く事が出来ました。図2は,アデレードのフィニッシュゲートをバックにして撮影をしたものです。(左端は筆者)そして,翌年の平成12年から始めたのが「ご恩返しの産学連携」でした。この「ご恩返しの産学連携」とは,私達の夢の実現に支援をして頂いた方々に,今度は支援して頂いた方々がお持ちの夢の実現に少しでも手伝いをさせて頂こう,地域に貢献しようというものでした。しかし,手伝いできる内容はソーラーカーの開発

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