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図5 不整形物の心だしの様子図6 不整形物の穴開けの様子移動振れ止めの使用方法ではφ38×700の素材を使用して実技指導が行われた。その際,材料を保持する2つの振れ止めの駒(以下,「駒」)の位置関係と役割の違い,振れ止めの取付け方法,加工方法による駒とバイトの配置方法,加工中の2つの駒を調整するための調整ねじの使用方法,作業中の機械と作業者の安全な立ち位置,および安全作業を意識した振れ止めの操作方法について指導を受けた。固定振れ止めの使用方法では,φ65×600の素材を使用して実技指導が行われた。この課題(又は作業)では,旋盤に材料を固定する前に同軸を得るため軸両端面にセンター穴を事前にあける必要がある。その為,片パスを用いて円筒中心のケガキ作業,電気ドリルによるセンター穴加工を行った。また,固定振れ止めの旋盤への取付け方法,駒による材料保持方法,回転中に駒と材料が摩擦熱による焼き付き防止を目的とした革ベルト等の使用方法,3つの駒の役割と切削加工中の使用方法,および高精度な同軸度を得るための加工手順について実技指導を受けた。最後に,長尺物加工についても指導技法の統一化と指導ポイントの明確化のために,能力開発セミナー用カリキュラムとテキストを,ねじ切り加工技術と同様に作成した。3.3 不整形物(面板作業)の加工方法の技能伝承現在ではNC工作機械やCAMの発達により,熟練者ではなくても,複雑な形状をもった製品の加工ができるようになってきている。過去に熟練者が知恵を出し,取付具や冶具などを製作しながら加工を行ってきたことが容易にできるようになっているため,普通旋盤などの汎用機での複雑な形状加工を指導する経験のない指導員が多い。そこで,平成25年度は普通旋盤を用いて不整形物と呼ばれる形状の加工をする方法をテーマとした。普通にチャックでは固定できない円筒形状の外周にドリルで下穴を開け,さらに内径加工を行って図面の寸法公差内に仕上げる加工を行った。この材料を旋盤に固定するため,面板やイケールといった取付具を用い,さらには加工する材料を回転させたと-5-きの動バランスをとるために,重りを付けた。また,材料の心だしは材料にケガキをし,トースカンを使用して慎重に心位置の確認を行った。心だし作業の様子を図5に示す。加工物を固定している状態が不安定であるため,高速回転をすると,遠心力により材料が外れる危険があるという指摘がベテラン指導員からあった。そのため,穴開け作業と内径加工ともに低速回転数でも目標とする面粗度が得られるハイス工具を使用し,切削を行った。穴開け作業の様子を図6に示す。不整形物加工は今回のような形状だけではないが,加工法の考え方と加工法の一例を経験することで,様々な難加工形状に対するアプローチの幅を広げることができた。

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