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図2 ねじ切り加工の実技指導の様子近畿地方の経済圏は,京阪神地域を中心として一円に広がっている。また,産業界の各社・各グループは,近畿ブロック一帯に展開している。このような産業界の展開に対して,機構組織も施設毎の慣行に捉われず,産業界同様の機動的な活動が必要だと考える。産業界の機動性にわたしたちの組織が持つ知識や技能,技術支援方法を適合させていくためには,一つの施設にとどまることなく,経済圏の視点で行動することが必須である。これらのことを前提に,近畿ブロックでは協働組織として,「顔ねっと」を積極的に実施している。そのなかで,「顔ねっと機械加工」では,ベテラン指導員からの機械加工作業や実践的な加工手法に関する技能伝承と,それら指導技法の共通化を図り,企業に対してハイレベルな技術支援が行える技能者集団の構築を図るための活動を行ってきた。本稿では,「顔ねっと機械加工」にかかわった過去6年間の実施内容と今後の技能伝承の在り方についてまとめた。顔ねっと機械加工で取り組む技能伝承のテーマは,毎年度の7月頃に行われる「顔ねっと機械加工」の委員会で決定される。委員会では,各施設の機械系指導員が参加し,機械加工に関する技能についての問題点や加工方法についての課題点や疑問点などを話し合い,技能伝承として相応しい内容をテーマとして決定している。ここでいう相応しい内容とは,書籍等に詳しく記載がない要素であり,習得し難い実践的な加工手法だけでなく,治工具類の使い方の基礎から,技能の発展性を期待するための作業手順などをさす。以上のようにして決められた技能伝承のテーマに関して,前提となる知識や技能の確認とともに,企業で求められる加工技能や実際に行われている機械加工法,技能の発展的な内容に対してベテラン指導員から教授して頂いている。平成22年度においては,普通旋盤によるねじ切り-3-加工に関する総合的な技能伝承を行った。平成23年度および平成24年度においては,企業から指導支援の相談があった長尺物の旋盤加工技能についての技能伝承を行った。平成25年度は不整形物の加工方法,平成26年度はパスを使用した加工と測定の極意を実施した。平成27年度は工具研削を行った。なお,平成22年度から平成26年度までは坂井利文氏(滋賀職業能力開発促進センター機械系指導員:平成24年度おうみの名工),平成27年度は藤原力氏(京都職業能力開発短期大学校機械系指導員)にお願いし,関連知識に関する講義と実技指導をして頂いた。3.1 ねじ切り加工の技能伝承普通旋盤によるねじ切りのテーマでは,高精度ねじ加工を目的とした場合の実技作業として挙げられる,①ねじ切りバイトの研削作業,②ねじ加工作業,③ねじ精度の測定・評価作業の3項目について技能伝承を行った。ねじ切りバイトの研削では,普通旋盤作業の訓練で多く使用されているハイスヘールバイトを用いて,両頭グラインダと油砥石を使用した作業を行った。その際,ねじ切り荒削り用や仕上げ削り用のすくい角のつけ方の実技指導を受けた。ねじ切り加工作業では,普通旋盤におけるねじ切り機構,歯車選択方法(2段掛け・4段掛け),切込2.技能伝承の実施計画3.実施実績

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