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図1 近畿の地の利京都職業能力開発促進センター 石山 樹里製造業界では2007年問題(団塊世代の退職者が最も多く発生する問題)の対策のために雇用期間の延長,他企業の退職者の獲得等により,熟練技能者が有する卓越した技能を維持し,製造活動を続けた。さらには若者の工場勤務離れも相乗し,その結果,製造業における就業者数が減少し,高年齢技能者の割合が増加した。このため,高齢技能者が有する熟練技能を若年技能者へ技能伝承することが急務とされている。しかし,多くの中小企業においては,技能伝承の手法が明確化されていない,あるいは技能伝承をするための時間や人的余力がない等の理由により,技能伝承に満足な施策がとり難い状況にあることが報告されている(1)。職業能力開発施設においても,団塊世代のベテラン指導員の退職や新規採用指導員の減少などにより,若手指導員がベテラン指導員からの技能伝承のための実技指導等を受けることが難しい状況にある。一方で,全国規模の組織である職業能力開発促進センター及び職業能力開発大学校では,統一した訓練カリキュラム,指導技法,および訓練効果が求められている。しかし,統一されているのは訓練カリキュラムであり,指導技法のうち作業の提示については,指導員によりばらつきがあることがしばしば見受けられる。これらを改善するため,近畿圏では顔の見えるねっとわーく(以下,「顔ねっと」)という取り組みが活用されている。-2-「顔ねっと」は,機械系機械加工分野(以下,「顔ねっと機械加工」),機械設計分野,溶接分野,など計9つの分野に分かれている。各分野ともに,技能伝承の他,情報の共有化,訓練内容の調整,テキストの共同作成,教材の共同開発,訓練技法の研究・伝授など,様々な活動へと発展している。また,業務を円滑に行うための意見交換や調整,不明瞭な点の相談や解決なども図られている。図1に近畿ブロックの施設配置地図を示す。近畿ブロックは,北は京都府舞鶴市,東は滋賀県近江八幡市,南は和歌山県和歌山市,西は兵庫県加古川市へと広がっているが交通の便が良く,また移動に要する時間も他のブロックに比べて短いため,「顔ねっと」への参加者は京都や大阪などの中心部施設に集結しやすいという特色があり,これを近畿ブロックでは「近畿の地の利」と表現している。1.はじめに「顔の見えるねっとわーく」を活用した機械加工指導員の技能伝承

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