3/2016
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図5 双極子モーメント図6 スケールの違いから見た机の上の物体ムであるが二つの原子が接近すると互いに引力となるように向きをそろえる。原子間力はこの他イオン結合もあるがいずれもクーロン斥力とクーロン引力が力の源となっている。2.2 マクロから見た摩擦力今度は視点をマクロへと広げてみる。マクロな固体表面間の摩擦力の初期研究は,レオナルドダビンチ(Leonardo da Vinci,1452-1519)アモントン(G.Amonton,1663-1705),クーロンによって実験と観察が積み重ねられた[1]。これらの3人がたゆみない観察を積み上げてまとめたものがクーロン摩擦と呼ばれているアモントン・クーロンの法則である。その内容は,1. 摩擦力は見かけの接触面積によらない2. 摩擦力は垂直抗力に比例する3. 動摩擦力は最大静止摩擦力よりも小さい4. 動摩擦力の大きさはマクロな物体の質量中心速度によらないというものである。ここで図6のように机の上に物体(固体)を置いてみよう。我々にはこの状況は物体が机の上の表面と接触していると認識する。しかし,接触面をみるスケールをどんどん小さくしていったらどうなるのだろうか?クーロンはどんなになめらかな表面でもミクロなスケールにすれば凹凸があるはずだと考え,表面間の凹凸が引っかかることで摩擦が起こると考えた。確かに潤滑剤を界面に塗布すれば直接凹凸が接触しなくなって摩擦力が減る。ここで「引っかかる」という現象をマクロな現象をミクロ的にとらえてみ-26-よう。一般的に物体は原子間力が引力になるほど表面原子間に近づいて接触している。この領域を真実接触領域と呼ぶ。この真実接触領域はみかけの接触面積に比べてはるかに小さく,またモデルを簡単にするため大気中の不純物など介在は除外しておく。その真実接触面積をA,n番目の領域に作用している斥力をM→nとする。これらをすべて真実接触領域について足し合わせ,これを真実接触面積で割ると圧力を示す式(3)となる。この圧力Pは,表面間斥力の単位面積あたりの平均値(表面間の接触圧力)を示している。斥力一つ一つは界面の状態によって任意の方向に作用するがすべてを合成した斥力は接触面に垂直方向となる。そしてこの圧力pに真実接触面積Aを掛けたものがマクロ的な垂直抗力Nと呼ばれているものになる。る。これを式(4)で表す。ここで垂直抗力は真実接触領域に作用する斥力の統計的な平均値を扱っていることになる。さて今,机の上で物体を引きずることにする。図7に示すように真実接触領域どうしが引きはがされるときに表面分子間の距離が拡がって原子間力によって凝着が起きる。表面間に横すべりを起こそうとすると,その凝着が横すべりを邪魔しようとする。これがマクロ的に「引っかかる」と解釈されており静止摩擦と考えられている。さて,無数にある真実接触領域での凝着力が重ね合わさった結果両者の間に引きずり現象が起こる。この表面に沿う方向に(3)(4)

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