3/2016
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図2 SPMを説明した力学モデル図3 レナード・ジョーンズポテンシャル曲線[2]図4 原子の基本モデル体系化されてきた。ここではまず現象論的な力である摩擦の起源についてミクロスケールからマクロスケールまでを探っていくことにする。2.1 原子レベルからみた静止摩擦力固体表面を原子スケールで探索するのが走査型プローブ顕微鏡(SPM)である。SPMはテコと,その先に取り付けられた深針(カンチレバー)およびこれらの制御システムからなっている。その基本的な構造は図2に示すようなおもりを付けた単純なばねモデルで表すことができる。SPMのカンチレバーとして,現在では,先端が数原子からなる極微カンチレバーが作られている。周囲を超高真空に保っており,おもりを固体表面から十分離しておけば,おもりにはばねの弾性力が作用する。先端原子が感じるばねの弾性力によるポテンシャルをU0(r)とすると式(1)のようにフックの法則で表わされとなる。このときkはカンチレバーのばね定数[N/m],rはカンチレバーの触れ幅[m]である。次にカンチレバーを固体表面に近づけていくと,先端原子と表面原子の距離が近づくとなんらかの原子間力が働く。この結果カンチレバーの針がたわむ。これがSPMの一種である原子間力顕微鏡(AFM)である。こうして測定される分子間力のポテンシャルの様子を図3に示す。この曲線を上手くカーブフィットできる式としてレナード・ジョーンズポテンシャルがよく使用される。-25-これを式(2)に示す。式(2)中のεとσはそれぞれポテンシャルの最小値と最小値を与える原子間力の程度を表している。この曲線から原子間距離が近傍では大きな斥力が働くが,4nm程度の領域では引力が働いているのが分かる。これが静止摩擦力の起源である。では静止摩擦力の起源となる原子間力とは何だろうか。原子の構造は図4のように電子・陽子・中性子で別々の素粒子であって異なる質量と電荷をもっている。陽子と中性子からなる原子核のまわりを陽子と同数の電子が取り巻いている。(1)単体原子は陽子と電子の数が同じであるために電気的に中性である。従って図4のような基本モデルの場合,電気的な偏りがない。しかし電子の軌道は図5のような雲のようになっており,その重心は必ずしも原子核の中心と一致しない。このずれは双極子モーメントをつくる。その大きさと方向はランダ(2)2.スケールの違いからみた摩擦

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