3/2016
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図表2.八反原太陽光発電事業のバリューチェーンモデル(出所):筆者作成HCCと日立の共同出資により設立した風力発電事業会社である。HTWは,自らが有する風力発電設備で発電した電気を,従来の電力会社に加え,2000年より進む電力小売市場の自由化に伴う新規参入業者に販売するとしている。このような状況下において,日立が下したのは,自らが風力発電事業者となり,顧客(風力発電事業者)と同じ視点に立つ戦略である。この事業モデルは,太陽光(メガソーラー)発電事業と同様に,風力発電事業者の立場で,「顧客が真に必要としているO&Mのノウハウを蓄積すること」,「顧客のサービスニーズを把握し,新たなアウトソーシングビジネスを創造すること」を最大の目的としている。中小発電事業者は,風車とそのO&Mをワンストップでアウトソーシングしたいというニーズを持っている。この顧客ニーズに対して,日立は,発電機器の開発製造を担う事業部と,HTWで培った事業運営のノウハウを転用し,従来の保守サービスから運営まで-20-を含めた風力発電事業運営のワンストップサービスの展開を検討している。また,HTWから得た事業者としての知見をベースに,日立グループの他事業部門との連携による新たなサービス事業を創出する取組みも行われている。具体的には,予兆診断技術によるCBM(ConditionBasedMaintenance)とロボットによる保守自動化技術がある。通常,風車の保守は,メンテナンスを行う機器が高所にあるため,手間と労力が掛かり,人件費がかさむという問題が指摘できる。特に洋上では,人件費に加えて,現地への作業員の移動だけでも高額な費用が発生する。さらに,危険を伴う高所での作業は,作業員の安全面での課題を抱えており,現在,日立では,これらの課題を解決するため,予兆診断を用いたCBMとロボットを用いた保守自動化の開発を検討している。CBMとは,設備状態に合わせて,必要な時だけメンテナンスを行う保守手法である。これにより,

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