3/2016
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図2 オルゴールシリンダ自動加工機(2015年度)表1 地域ニーズによる課題テーマと外部協力者同開発を行っている。図2に2015年度に開発したオルゴールシリンダ自動加工機を示す。これら2つの開発課題は表1のとおり地域における外部協力者と共同で行った。ここでは地域ニーズ型開発課題の特徴とその特徴を活かした指導方法,期待される教育効果について事例を挙げて報告する。地域ニーズ型テーマの特徴について次に述べる。(1)課題が明確である地域ニーズ型テーマは抱えている問題が明確になっている場合がほとんどで,要請された課題を技術的に解決できれば,地域に貢献できる性質をもっている。「エゾシカ囲いワナ」の例では外部協力者-15-によって,詳細な性能を表す仕様が策定済みであった。例を挙げると,ワナのサイズ[直径16m]・製作コスト[100万円以下]・可搬性[4tトラックに積載可]などであり,開発前に要求項目が確定していた。また「オルゴール加工機」の例では,過去に先方で同様の課題を取り組んだ経緯があり,それを発展させたいという具体的な要望があった。過去に開発した装置を借用できたため,実機をもとにした改善検討が可能であった。このようにプロジェクト開始前に「何をつくるか(what)」の部分が明確であったため,学校側として「それをどうつくるか(how)」に注力することができた。学生においてもゴールをイメージしやすいため,開発初期段階で解決法や改善案などのアイデアを出しやすい状況であった。また評価される場面では,課題を解決できそうか否かで外部協力者から判断されるため,フィードバックを得やすい環境が整っているといえる。(2)対象について学校側は素人である。プロジェクトスタート時は学生や教員にとって,開発対象となるエゾシカやオルゴールについて,ほぼ無知の状態でありいわば素人同然である。一方,外部協力者は長年その対象に携わっているため幅広い知識と経験を有している。このように学校側と外部協力者には対象について保有する知識や経験に大きな隔たりがあり,学校側として開発を行うために必要な最低限の周辺知識を習得しなければならない。さらに学生にとっては開発期間が1年間に限られているため,短期間で効率的な知識獲得が求められる。一方素人ならではのフレッシュな発想ができるという側面もあり,積極的に新しい考えを表明することが共同開発における学校側のひとつの役目であると考える。(3)外部要因がプロジェクトに作用する地域ニーズ型開発課題は外部協力者と連携してプロジェクトを進めていくことになる。開発スケジュールやプロジェクトの進め方は学校側の都合だけでなく,先方の都合や外部要因で決まることがある。外部協力者との定例合同会議を例に挙げると,先方の都合もあり合同会議の開催頻度が2〜3ヶ月に2.地域ニーズ型テーマの特徴

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