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例えば,どのようなタイプや状況の人に対し訓練校としてどのような対応をすることでどのような結果となったのか,またそれらの結果を集約しどのような関わりがグッドあるいはベターなプラクティスなのか,さらにはその要素を抽出する,その実施度の測定や促進・阻害要因を把握するという方向性も考えられよう。近年,障害者職業訓練分野では特別支援障害者という概念が提唱されており,そのような障害種類のある人たちをいかに障害者訓練校(コース)で受け入れるのか,ということに焦点が当てられている(職業訓練上特別な支援を要する障害者の職業訓練の在り方に関する検討会,2013)。ここでは,それに加え,「(発達あるいは精神)障害者」ということで捉えるべきか不明に思われる人が一般校(一般コース)に入った場合に職業能力開発校としてどのように対応すればいいのかについてもさらに知見を進める必要があることの指摘をしておきたい。4.3  他機関との連携・ネットワーク構築業務を誰が担当するのか訓練生募集においては職業訓練受講が適切な障害者に職業訓練を勧める,また職業訓練を修了し就職した障害者の職場定着や就労生活を支える,職業訓練を修了しても就職への準備がまだ十分でない場合に職業訓練後の進路支援をする,等の場面で関係機関との連携をする必要がある。しかしながら「はじめに」で示したように,障害者職業訓練の分野は,これまで障害者支援関係者にも職業訓練関係者にもあまり十分に知られているとは言い難い状況であり,他機関との連携やネットワーク構築が十分にできているとは言えない状況にあるのではないだろうか。このことは障害者職業能力開発推進会議(2015)で障害者職業訓練の課題の一つとして挙げられている「地域における実効あるネットワークの構築」とも通じる面があるだろう。効果的な職業訓練の実施・就職促進のための関係機関の連携強化やネットワーク構築(あるいはネットワークへの参加)がより一層求められているのである。それでは,職業能力開発校はどのように関係機関-7-と連携やネットワーク構築・参加をすればいいのだろうか。連携やネットワーク構築・参加とは,結局のところまずは「人」により開始されるものであり,職業能力開発校の職員の誰かが担わねばならないものであろうが,誰が担うべきなのか十分な議論は行われてこなかったのではないだろうか。考えてみれば,障害のある児童・生徒の通う特別支援学校には進路指導教諭がおり,福祉施策下の就労移行支援事業所には就労支援員,とその組織にとっての外部機関と連携することが重要な職務である職員が配属されているのに対し,職業訓練ではそのような専門性のある職員の配置があまり明確には示されてこなかったように思われる。職業訓練指導員の役割などを確認しても,職業訓練教材研究会(2012)では訓練生への指導(訓練の実施)だけではなく,コーディネータとしての役割があることが示されてはいるが,関係機関との連携をどのようにするかはあまり明確には示されていないように見受けられる。他機関との連携・ネットワーク構築業務を担うのは,職業訓練指導員がいいのか他の専門性を持つ職員がいいのか,もし連携・ネットワーク構築業務を担う専門職員を設置するのであればその職員は具体的にはどのような役割・職務を担っていくべきなのか,その職員と職業能力開発校内の指導員とでの校内連携はどのように進めればいいのか,等を早急に検討していく必要があるのではないだろうか。以上,障害者職業訓練の概要と課題を見てきた。冒頭に述べたように,障害者職業訓練という分野は,あまり関係者にも十分に知られているとは言えない状況である。それは他の分野に比べ,訓練生(利用者)の数や専門職の人数が,関連する他分野に比べ小規模ということも影響しているのかもしれない。またそのために対応していくべき課題もあるが,その解決に十分に取り組めていない部分もあることも考えられる。しかしながら,障害者職業訓練は障害者支援分野5. おわりに

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