2/2016
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定年まで,主に飛行訓練装置の技術開発に従事してきた。そんな私がどうして就職支援の仕事をするようになったのか。きっかけは「考え方の論文を発信できなければ一流の技術者とは言えない」というメッセージだったと思う。入社当初に日系アメリカ人の技術マネジャーから叩き込まれたことが影響している。残念ながら一流技術者にはなれなかったが,考え方の技術論文だけはせっせと書き続けた。おかげで,生徒達の思いが積もった志望動機や自己PRなどの応募書類に対して,私ならこう書くが,とその場での添削が何となくできるようになった。まさにペンを走らせる特技が就職支援の天職を導いてくれたわけで感謝している。物事には必ず理由がある。今の仕事を選んだ理由は?と問われたら,相手の最高の笑顔が見られるからと答えたい。当センターには若年者から高齢者まで,多様なニーズに沿った訓練科目が存在する。そこで学ぶ生徒達に対し,職業観や人生観を理解し,その上で指導員の先生を支援する形で,応募する職に合った履歴書・職務経歴書の添削,面接指導に注力している。その結果が就職内定にむすびつく。就職支援は料理作りと似ていると思う。就職支援では,自分に合った就職先選び,応募書類の仕上げ,面接リハーサルが求められる。他方,料理の場合は,-42-メニューを決め,旬の食材を選び,腕によりをかける調理技術が不可欠だ。どちらにも共通することは,情熱に支えられた創造力と自己研磨である。そして,これが一番のポイントだと思うが,やりがいを持って取り組むことであり,その先に相手の笑顔が待っている。就職支援が料理作り以上にユニークだと思う点がある。それはレシピのようなわかりやすい教科書が存在しないことだ。したがって,その場の感性が問われるし,先を見据えた分析と判断が必要になる。求人側が求める職務や資質に対し,応募者の人間力,職務への取り組み姿勢,職業スキルがどうか,相手の懐に入って最適解を導かねばならない。未知のファンクションが微妙にからみ,いわば連立方程式を瞬時に解くようなものだ。それだけ大変ではあるが,逆に考えればこれほど脳細胞を刺激する仕事はめったにないのではないか。仕事選びは人生最大のイベントである。特に若者にとっては,未来を開く人生設計の基盤ともなる。なぜ,その仕事を志望したのか,その仕事にどう取り組むのか,それらの理由を明確にし,本当にやりがいのある仕事に就こうではないか。就職支援をやっていて一番うれしい瞬間,それは言うまでもなく,生徒が内定の報告に来る時である。そのあふれる笑顔に接すると,それまでの苦労も吹っ飛び,こちらも笑顔になれる。こんな時の晩酌ビールは格別だ。笑顔がつなげる就職支援に乾杯!相手の笑顔が待つ就職支援は料理作りと似て

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