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2020年度に東京オリンピックが開催されることを受けて,日本国内に「おもてなし戦略」の醸成を図るべく,ホスピタリティ・マネジメントの必要性が国家的に推進されようとしている。とりわけ,現在過渡期にある鉄道業界全体においては,これらを実現することが必要である。これらを達成するためのシステムとして,鉄道業界全体では各社ともに急ピッチでインフラ面での整備を着々と進行させ,新型車両を登場させたり,駅内のサービスを充実させるなどの投資を図っている。しかし,これらを本質的に司るべき人材の育成や,ホスピタリティ面での整備については,まだまだ具体的な方向性が見えておらず,これらに関する対策は急務であると考えられる。本研究においては,鉄道業界における職業能力とホスピタリティ・マネジメントの関係性について検証し,鉄道業界全体におけるホスピタリティ・マネジメントの方向性に関して論じることを目的とする。本論の目的は下記の通りである。◦ 鉄道業界における業務について,ホスピタリティ・マネジメントの見地から分析する。◦ 鉄道業界で行われている各種の教育について検-20-討する。◦ これらの中からホスピタリティ・マネジメント教育に関する。◦ 企業の職業能力開発に関する事例をとりあげ,業務の参考に資すること。◦ 鉄道業界における情勢や動向を調査し,能力開発業務における考察を行う。上記に関する各種の研究等を通し,鉄道業界にホスピタリティ実現を図るために有用な研究ノート,資料となることを目指す。3.1  ホスピタリティの意味Hospitalityの語源はラテン語のhospesから来ている(HospitalやHotelも同義語)。意味は「客人の保護者」「賓客」「主人の役回り」「見知らぬ人」など多数存在するが,「もてなしを享受する対象」という点では一致している。しかし,これらの方向性が「もてなし」の語源である「持って成す」から来ていると言われる。また,「共飲共食」「まれびと信仰」と同義ともされていることからすると,日本における「もてなし」の概念としては「異人歓待」というのがHospitalityの本質的な解釈であるといえよう。遠方からの見知らぬ客人を迎え入れ,飲食や宿泊などを引き受けることから観光業界が始まったことを考えると,Hospitalityの現場がまさに観光業界の現場であるということがいえるだろう。1. はじめに2. 本論の位置づけ3. ホスピタリティの概念に関する一考察―ホスピタリティ・マネジメントの視座から―江戸川大学 崎本 武志鉄道サービス担当者における職能教育に関する一考察

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