2/2016
20/54

図2 事例1における支援経過-18-事例1:Aさん(精神障害のある方)Aさんは,30代男性,障害を公表し工場で組立作業員として勤務するも安定した出勤ができずに試用期間で終了となった。生活リズムが不規則ではあるが,職業訓練には大きな問題もなく取り組むことができていた。就職に対しては自身が働くイメージができずにどうしたらよいかわからない状況であった。① 注意を生み出す工夫まずはAさんに働くイメージが持ってもらうために,役場に依頼し職場体験実習を実施した。作業内容である郵便物仕分け,資料のファイリングはあらかじめ練習し負荷が少ない状態で実習へ臨んだ。また今回は,自身の作業だけでなく周りの人がどんな働き方をしているのかを見てくることにも重点を置き,振り返りのなかで職業に対するイメージをより具体的なものにした。② 関連性を確立し支援する工夫それからは役場で実施されていたデータ入力や押印などの事務補助作業を中心に職業訓練を行った。職場体験実習により実際の作業内容と訓練での内容に関連性を見出すことができ,就労に対するイメージが現実的なものになり,希望する労働条件についてある程度まとめることができるようになった。③ 自信を構築する工夫Aさんの希望する条件にマッチングした求人が見つかったので,まずは職場見学を行い,実際に担当する職務内容などを練習したうえで,就職に向けた実習を3週間実施した。徐々に職場環境にも慣れるように1週目を午前のみとし,段階的に勤務時間を延ばすこととした。初めは不安そうな顔で作業していたAさんであったが,作業を通して自信をつけ,職場環境にも慣れ,安定した勤務ができていた。④ 満足感をもたらす工夫Aさんは,職場実習で高い評価を得て就職することができた。Aさんからは達成感とともに就職後もがんばろうという意気込みが感じられた。図2は,事例1における支援経過である。職場体験実習を通して職業のイメージを具体的にし,イメージに近づけるように職業訓練を行った。その成果が実習で発揮され,安定した職業生活へ結びついた。事例2:Bさん(発達障害のある方)Bさんは,20代男性,就労経験はなく,支援機関の紹介で吉備リハのオフィスワークコースにてパソコンや事務補助業務に関する技能職業訓練を受講した。就職に向けて苦手なコミュニケーション面を良くしたいという気持ちはあるものの,職業訓練に対しては消極的で作業に集中することができず,ミスが多い状態であった。① 注意を生み出す工夫どうすればBさんが意欲的に職業訓練を取り組めるかと考えた際に,まずはBさんがどういうことに興味・関心があり,どんなことを考えているのかについて知る必要があった。このため,作業の始まりに,コミュニケーションスキルの向上を図ることも兼ねて相談を実施するようにした。その中で,家族とのトラブル,他の受講者が気になり作業に集中できないこと,パソコン作業は好きだがミスが多い結果に対し自分にイライラしていること,何をやってもダメな自分に自信が持てないことなど知ることが4. ARCSモデルに基づく事例

元のページ  ../index.html#20

このブックを見る