2/2016
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表1 ARCSモデルの分類枠,および定義訓練指導員と適応支援を担当する障害者職業カウンセラー等によるチームティーチングにより職業訓練から就労後のフォローアップまで一貫した支援を実施している。職業訓練の内容としては,技能訓練においては受講者の既存の技能習得レベルを把握し,必要に応じたより高いレベルの技能習得に向けたカリキュラム設定を行いつつ,職業訓練,実習において成功体験を積み重ねることで自信を持たせ,就職という明確な目的を目指すことにしている。また,職業生活への移行を円滑にするために就労場面を想定した職業適応指導(ビジネスマナーや個別相談等)の実施により,状況に応じた行動やコミュニケーションの基本パターンの学習に主眼を置くこととしている。実践に即した職業訓練にするために,日々の訓練場面が職場と同様であるという意識づけをし,職業訓練指導員を上司,先輩受講者を先輩社員と位置づけ,指示の受け方,上司・同僚への報告,連絡,相談の場面を多く設定している。これにより,繰り返し学習によって適切な職業行動を形成・強化させ,不適切な行動を低減させることに努めている。さらにできるだけ多くの職種の作業を体験させ,職業選択の幅を広げることで,できる限り適切に本人とマッチングする職域を開発している。職業訓練の目標としては,一般企業への就職による職業的自立を目指す(または職業的自立の可能性を高める)ための実践的能力の習得と,継続的・安定的就労に向けた労働習慣等の確立を目指している。吉備リハにおける支援内容の特長として,◦ 産業・企業のニーズに即した専門的知識・技能の習得◦ ビジネスマナー(職場慣行,対人関係,取引先企業や顧客との対応等)の習得◦ 継続的な就労を可能にするための生活面,健康面,通勤面等での自立◦ キャリア形成指導(職業意識の確立,職業選択,就職活動,長期的なキャリアプランの確立)◦ 具体的な就職活動(面接同行や就職に必要な各種手続きのフォロー)◦ 障害特性に応じた作業指示,手順等,企業現場-16-における技能指導法の確立◦ 以上の支援を実施した上での各人の特性を踏まえた雇用環境(職場環境)の調整職業訓練における最終目的は,就職し職場へ定着することだが,まず就職するためには自分が就きたい職業のイメージが形成される必要がある。そのイメージは,企業から求められる技能を理解し,必要な知識・技能と職業訓練で習得できる知識・技能が一致することで明確化される。しかし,発達障害や精神障害のある方の場合,就職に対する意欲はあるものの,自己の適性の理解しにくさ,職業イメージの乏しさや不安感などの理由から明確な訓練動機を持つことができず,受講の継続が難しいケースもある。そこで,まずは本人の興味関心を把握することから始め,具体的な目標設定を行うためにも,目標を意識させることを通して,職業訓練への動機を持たせる支援が重要かつ必要である。アメリカの教育工学者であるJ.M.Kellerは,動機づけに関する膨大な心理学研究や教育現場での実践経験に関する文献について詳細な調査を行った。共通する要因の統合・整理を試みた結果,ARCSモデルが創出された。表1はARCSモデルの分類枠,および定義である。ARCSモデルは,学習意欲を「注意(Attention)」,「関連性(Relevance)」,「自信(Confidence)」,「満足感(0Satisfaction)」の4つの3. ARCSモデル

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