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図5 りんごの木の有効利用例<参考文献>ことから、医療機関や一般住宅向け建築資材として幅広い用途が見込まれ、市場性が高い。建築資材として電波遮蔽性、調湿性、断熱性、脱臭性、吸音性の多機能を合わせ持った特徴を有する。ものづくり、言い換えると、「ものを作る」ことは、材料及びその材料を加工することからスタートする。そこで、今回提案している研修は、ものづくりの工程の中で最初に取り扱う「材料」を題材にしている。循環型機能性素材の一例として、図5に材料の有効利用を示す。りんごの木あるいはりんごの木の根っこ29)を使ったテープカッターのボックスとしての有効利用例である。そこで、今回提案している研修では、以下の内容を目標としている。エコマテリアル及びエコものづくりの現状と課題、そして循環型機能性素材及び循環型処理技術を使った製品開発について学び、環境に配慮したものづくりの指導を行うために必要な技術と開発手法を習得することを目標とする。具体的な研修内容について、次節に示す。6.2 研修カリキュラム学科と実習で構成された5日間の研修である。学科では、環境材料のエコマテリアルに関する最近の動向及びエコものづくりの立ち上げの経緯と循環型社会形成推進基本の内容について解説する。そして、木材あるいは木質系材料のバイオマス資源を使った循環型処理技術と循環型の環境材料の機能性素材について紹介する。更には、バイオマスに関する最近の動向、バイオマスの利用、バイオマスによる産業の創出、バイオマスネルギーの利用、そしてバイオマス物流について解説する。-33-1)鈴木堯士:実践教育,Vol.17,No.4,pp.16-22,20022)秦 啓祐,砂田栄光,岡部敏弘:「ものづくりと環境問題」:「技能と技術」誌,Vol.43,1,pp.54-58,20083)秦 啓祐,水渡博幸,岡部敏弘:ものづくりと環境材料~環境に優しい木質バイオマスの開発~:「技能と技術」誌,Vol.47,3,pp.27-32,20124)2014年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告),経済産業省,第1部 ものづくり基盤技術の現状と課題,第2章 成長戦略を支えるものづくり人材の確保と育成,第1節 成長戦略を支えるものづくり人材の確保と育成の課題と対応,pp.194-197,20145)2014年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告),経済産業省,第1部 ものづくり基盤技術の現状と課題,第2章 成長戦略を支えるものづくり人材の確保と育成,第1節 成長戦略を支えるものづくり人材の確保と育成の課題と対応,pp.198-200,20146)MRS-J:http://www.mrs-j.org/一方、実技では、循環型機能性素材を使った、例えばリンゴの木の素材を使っての5Sに配慮した製品開発プロセスの体験、そしてバイオマス資源の炭化処理による製品開発について習得する。環境とものづくりは密接な関係にある。ものづくりを通した人材育成を行う場合、環境に配慮した訓練技法(指導方法)を構築していかなければならない。環境に配慮した加工方法を導き出し、指導していかなければならない。これらの課題に対して早急に対応策を講じなければならないと思われる。ものづくり指導に携わっている指導員の方々に取り組んでいただくことを願う次第である。以上、この報告が、これからの環境に対応できる離職者訓練、在職者訓練、そして学卒者訓練の人材育成のための新たな教材開発、あるいは指導方法の参考になれば幸いである。本報告の一部は、2014年8月に開催された実践教育訓練協会主催の実践教育研究発表会30)、そして同年10月に開催された職業能力開発総合大学校主催の職業大フォーラムにて発表31)した内容を基に作成したものである。7. おわりに

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