2/2015
9/60

“学習障害”では,読み書き(文字の区別がしにくい,鏡文字になってしまうなど)や計算(数字や図形を正確に写すのが苦手など)に関して特徴がある.ADHDでは,不注意(注意が散漫で気が散りやすいなど),多動(じっとしているのが苦手など),衝動性(質問が終わる前に答えてしまう,思いつくと行動をしてしまいやすいなど)の特徴があるとされる.また,発達障害のある人の中には感覚過敏や鈍麻(視覚,聴覚,嗅覚,触覚)などがある場合もあり,例えば,蛍光灯の光が苦手である,電話などが頻繁に鳴るような環境だと集中ができにくいなどがある.ここに書かれているようなものがある程度あてはまる人もいれば,ほとんどあてはまらない人もおり,その人その人で生活のしづらさや働きづらさは変わる.環境によっても生活に影響がでなかったり,生活のしづらさにつながることもある.他の障害のある人に比べて,個別性も非常に高いように感じる.・発達障害のある人に対してコミュニケーションに ついてのアンケートを実施平成26年,一般社団法人発達・精神サポートネットワークの協力を得て,発達障害のある人にコミュニケーション面での生活のしづらさや働きづらさに関するアンケートを実施したことがある.アンケートは,同団体が運営をしている喫茶店を利用した当事者に依頼をした.結果は43名からアンケートを回収できた.質問内容は,①職場や生活の場面でコミュニケーションから生じる生活のしづらさや働きづらさについて(自由記述)②上記のしづらさに対して,工夫していること,あるいは希望するコミュニケーションについて(自由記述)③働きやすさについてチェックリストを用いて聞いた.③では,「幕張ストレス・疲労アセスメントシート」のMSFAS(I)D 経歴,具体的な仕事の内容にある項目を参考にし,選択式の設問として利用した.自由記述欄では,コミュニケーションから生じる生活のしづらさや働きづらさが率直な意見として書かれていた.コミュニケーションに関して日頃から-7-困っていることを客観的に分析し自己理解をしているような印象を受けた.印象深かったのは,働きづらさや生活のしづらさの項目だけでなく,工夫している点についても非常に多くのことが書かれていたことだ.同団体では,日ごろから当事者研究会や当事者サロンなどを開催し,同じような悩みを持つ仲間と困りごとについて話し合うなどをしている.普段から困りごとや悩みについて考えている人が少なくなかったことを考慮に入れないといけないが,回答者の9割以上が何かしら工夫している点を書いていた.回答の内容を大きく分けると,コミュニケーションをよりよくとるためのコツ,状況ごとに自分なりの対応マニュアルを作っている,なるべくコミュニケーションをとらないようにしている,聞き手に回るようにしている,の4点であった.中でも聞き手に回るようにしているという回答が一番多かった.チェックリスト方式で「働きやすさ」について聞いた結果を図3にまとめた.その結果,①自分のペースで行う,②1人で行う,③指示されたことを行うに続き,④変化が多い,⑤変化が少ない,⑥物を相手にするが同順位で続いている.変化が多い,変化が少ないという正反対の項目が同じ順位に並んでいたり,少人数ではあるが,体全体を使う,いくつかの作業を並行して行うなどを選択していた人もいた.アンケート結果は発達障害のある人の特性の多様性と個別性を改めて感じさせられるものであった.合理的な配慮が求められてくると,こうした特性の何を,どう伝えるかも決めていく必要がでてくる.ただでさえ,自分自身の特徴や得意不得意などを考えていくというのは時間のかかる作業である.障害特性を整理し,合理的な配慮として相手に説明できるようになるには大変な作業になるだろう.そうした作業をより効果的,効率的に整理していく手段として,職業訓練を活用できるのではないかと考えている.

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る