2/2015
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・近年の障害者施策の状況について・障害者雇用の状況について最近の障害者雇用情勢は平成25年に障害者雇用率が引き上がってから,より一層売り手市場の傾向にある.東京都の障害者雇用情勢を見てみると,図1に示すように平成25年度の障害別新規求職者数では,身体障害者,知的障害者は減少しているのに対し,精神障害者は増加をしている.また,図2をみると,同年,障害別就職者数では3障害とも増加しているが,精神障害者は前年比20%以上の増加率となっている.就労支援の現場でも,東京都の障害者雇用情勢と変わらず,精神障害者あるいは発達障害者の方からの相談が年々増えている実感が大きい.最近では相談内容の傾向も変化してきており,これまでの職業経験の中で得たスキルを活かすことや自己実現を求める人が増えてきている.今後,更に法定雇用率が引き上がることが予想され,ますます企業の障害者雇用へのニーズは高まっていくと考えられる.精神障害者,発達障害者が障害者雇用の労働市場で主要な人材になっていくと,多種多様な働き方のニーズを持つ人材がますます増えていくだろう.図1 障害別新規求職者数(東京都)NPO法人日本就労支援センター 藤枝 洋介平成25年に民間企業での障害者の法定雇用率が1.8%から2.0%に引き上がり,障害者雇用納付金の対象事業主も平成27年4月からは,常用雇用している労働者数が100人を超える事業主が対象となった.企業で働く障害者も40万人以上に上る.平成30年には精神障害者も雇用義務と明記されることになり,法定雇用率の算定基礎に精神障害のある人が加わることになる.ますます,障害者雇用の枠組みで就労を目指す人が増え,企業が支援機関に求めるサポートも大きくなっていくと予想される.さらに,近々では平成28年に障害者差別解消法が施行されるとともに,改正障害者雇用促進法も施行される.障害者差別解消法では,不当な差別的取扱いを禁止し,国の行政機関や地方公共団体には障害者への合理的配慮の提供義務が課せられ,民間事業者には合理的配慮の提供の努力義務が課せられる.また,改正障害者雇用促進法で,就労する障害者に対し,民間事業者も合理的配慮の提供義務を負うこととなる.合理的配慮の具体的な内容は指針がでており,例えば視覚障害者であれば拡大文字,音声ソフトの活用,肢体不自由者であれば,スロープや手すりなどを設置することや,机の高さを調整し作業をしやすくするなどが言われている.ただし,これらの指針はあくまで好事例としての例示であるとされる.-5-1. はじめに―障害者就労支援機関での実践から―発達障害のある人の合理的配慮について

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