2/2015
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図1 年齢に対する高齢者と事業主の思い65歳以降も働けるうちはいつまでも働きたい。(50.3%)60歳定年に到達したが、継続雇用を希望し、働くことができた。(81.4%)60歳70歳定年の引き上げか、定年廃止の措置を講じている。(18.3%)65歳継続雇用制度を導入して、65歳までは働けるようにする。(81.7%)企業側の本音年齢②継続雇用制度の導入 ③定年制の廃止これに対する高齢労働者と事業主側の対応はどうか.以下の数字は,参考文献1)に示した「平成26年高年齢者の雇用状況(厚生労働省)」と参考文献2)に示した「平成26年度版 高齢社会白書」(内閣府)」による.まず,定年を迎えた高齢労働者であるが,60歳定年企業における定年到達者状況を見ると,継続雇用された者が81.4%,継続雇用を希望しなかった者が18.3%,継続雇用の基準を満たさず離職した者が0.3%である.就労希望年齢では,「60歳以降は仕事をしたくない」が11.7%,「65歳くらいまで」が,31.4%,「70歳くらいまで」が20.9%,「75歳くらいまで」が3.7%,「働けるうちはいつまでも」が25.7%となっている.また,事業主の対応であるが,高齢者の継続雇用制度の選択では,①の定年の引き上げが15.6%,②の継続雇用制度の導入が81.7%,③の定年制の廃止は2.7%となっている.これらにつき,年齢を軸に,高年齢者側の思いと企業側の本音を図1にまとめてみた.図1からわかるように,高年齢側の思いからは,60歳を過ぎたら働きたくないと願っているのが少数で,逆に,年齢に関係なくいつまでも働きたい,を希望する人が何と多いことか.高齢者側の思い-49-反面,企業事情からは,②の継続雇用制度の導入に踏み切っているケースが圧倒的となっている.この理由は明白だろう.現状の多くの事業主は,高齢者雇用の限度として概ね65歳を念頭にしている.定年の引き上げや定年制の廃止に対して,大きなリスクを感じている企業がそれだけ多い証しでもある.定年制の廃止は欧米諸国ではかなり浸透しているが,日本では年功序列的賃金体系からの脱却が完全にできていないこともあり,そこまで踏み切るのは難しいようだ.ともあれ,図1から,高齢労働者側の思いと事業主側の本音に,かなり隔たりがあることが透けて見える気がする.少子高齢化社会という言葉が国民に知れ渡るようになって久しい.大きな社会問題として横たわり,社会保険,特に老齢年金制度に及ぼす影響は計り知れない.容易に理解できることであるが,少子高齢化により保険料を納める若年者と受給する高齢者側とのバランスが著しく崩れるためで,老齢年金制度の危機と呼ばれる所以である.雇用の面から見ると,若者の労働力が減る一方で,前述した「高年齢者雇用安定法」により,一定時期までは高齢者の労働力が増えることを意味する.一定時期と断ったのは,少子化の波がやがては高齢者に到達することになるからだ.つまり,高齢者の雇用継続は決して事業主側だけの問題ではなく,高齢者自身とその家族を含めた生活・生きがい,そして福祉や地域社会などにも大きく影響し,今や社会全体として考えなければならない緊急のテーマであることがわかる.こうした社会的背景にあって,高齢者自身の労働に対する意識変化が顕著になってきた.かつて,少子高齢化が話題になる前は,多くの企業で働く人達にとって60歳定年になったら退職するスタイルが一般的であった.しかし,前述したように,近年,65歳でも70歳でも,働く機会があれば就労したい,と思う人が急激に増えてきた.厳しくなる一方の年金支給制度の影響で生活に余裕がなくなったこともあるが,定年後も積極的に社会と交流を持ちたい,健康維持のためにも規則正しく過ごしたい,ブラッシュアップを兼ねて新たな仕事に挑戦したいなど,

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