2/2015
18/60

在職中に中途で視覚障害者となった場合,障害の状況に応じて就業面や生活面で様々な課題が生じることになる.例えば,就業面では職種転換が余儀なくされることや受障前と同じ方法(視覚的に確認)でパソコン操作や紙媒体を扱った職務に従事することが困難となってしまう.また,生活面では食事や通勤を含む歩行といった点で専門的な支援の基に訓練を行う必要が出てくる.しかし,これらの課題をクリアしていく上で,一人で支援機器・ソフトを選定することや必要とされる技能を独学で身に付けていくことは極めて難しいと言える.そこで,職リハセンターと地域センター,さらには対象者の地元の支援機関が連携して必要な支援を行う.本稿では,中途視覚障害者が職場復帰するまでの経過を事例に基づき報告する.職リハセンターと地域センターが持つ機能を最大限に活用するためには,それぞれの役割を踏まえ支援していく必要がある.4.1  職リハセンターについて職リハセンターでは,障害の状況に応じた支援機器・ソフトの選定に係る助言及びそれらを活用した職務遂行に関する技術的な訓練が可能である.また,事業主は視覚障害者がどのような職務が担当可能かというイメージを持っていないことが多いため,職務抽出に係る支援も必要となる.しかし,遠隔地という地理的な課題を伴いやすく,地域に密着した支援を十分に行うことが難しい現状がある.4.2  地域センターについて地域センターは,休職者と事業主との職場復帰に向けた支援のコーディネートや地域に根差した支援が可能である.しかし,視覚障害者の利用者数が少-16-ないため,特に支援機器・ソフトや技術的な支援ノウハウの蓄積がしづらい現状がある.今回の事例で取り上げる対象者は進行性の疾病による視覚障害があり,中心部がわずかに見える視野狭窄という状況であった.進行性ということもあり,事業所としては業務の継続は難しいと考えていた面があった.そこで,対象者が最初に地元の支援機関に相談し,職リハセンター見学による情報取得を行った.この見学により対象者が職場復帰の可能性を見出すことができたことから,地域センターへ相談し,職場復帰支援のコーディネートによって事業所が再検討を行った結果,職場復帰を果たすことになった.そこで職場復帰に当たり,職リハセンターで職業評価を実施し,6ケ月の職場復帰訓練を実施することになった.訓練カリキュラムの策定に当たっては,現段階で不足するスキルは何であるか,職場復帰後に想定される職務は何であるかを踏まえた職場復帰計画書を事業所から提出していただいている.特に事業主が重度視覚障害者の雇用経験がない場合には,どのようなスキルを身に付けると良いのか,どのような職務を担当させることができるのか分からないことも多いため,技能的な部分や想定される職務等の助言を事業主に対して行うことがある.このように事業所への支援を踏まえつつ,訓練カリキュラムを策定している.今回の事例では6ケ月の訓練期間中に実施すべき主な訓練内容として,画面読み上げソフト・インターネット活用・表計算ソフト・プレゼンテーションソフト・事業所課題とした.なお,事業所課題については,訓練の後半に取り入れることとした.表1は主な訓練内容の一覧となっている.3. 職場復帰に係る視覚障害者の課題4. 職リハセンターと地域センターの役割と課題5. 職リハセンター入所までの経緯6. 訓練カリキュラムの策定

元のページ  ../index.html#18

このブックを見る