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⑵ 業界を取り巻く環境の変化 近年の建設投資の著しい減少により,地域の建設企業の経営環境は厳しい状況が続いていたが,防災・減災等国土強靭化政策により回復の兆しが見えてきている。また,建設投資に占める維持・修繕投資の割合は上昇傾向にあり,既存施設の維持・修繕に対する需要の高まりが期待されている。こうしたなかにあって,電気工事業者にあっては,多様な設備の新築工事から維持・修繕までの多岐にわたる事業展開が求められている。⑶ 人材確保・人材育成の課題 今後,スマートメータを核に電気工事の中心として期待されるスマートコミュニティに関連する太陽光発電システムや電気自動車の充電設備,燃料電池など,専門的かつ高度な技術が要求される事業への円滑な参入体制の整備を急ぐ必要がある。そのために若年層の確保,新規分野への進出のための人材確保,女性や高齢者の活用および優秀な人材確保・定着として,働きがいと誇りを持てる魅力のある職場づくり,職場環境の改善が必要である。 電気工事業はモノを売るだけではなく,技術や技能の質こそを売りにする業種といっても過言ではなく,そこに,全日電工連が推進している提案型技術営業※の真髄がある。その技術・技能を継承し,向や改修工事,電気保安の確保等を行うなど,社会的な役割を担っている産業である。 電気工事業の企業規模の特徴として,「平成21年経済センサス—基礎調査(総務省統計局)」によると,平成21年度における電気工事業の事業所数は59,934所,従業者数は422,837人で,1事業所当たりの従業者数が7.1人であり,全事業所の約83%が従業者数10人未満の小・零細企業である。また,電気工事業における従業者の年齢構成としては,「平成22年度労働力調査(総務省統計局)」の電気工事業が含まれる建設業全体の調査では,55~64歳が約24.8%を占め,最も多い年齢層となっている。また45歳以上の従業者数が50%強を占め,従業員の高齢化が進んでいる。-35-※ 提案型技術営業とは,従来のような発注者からの発注内容どおりに施行するだけでなく,施主・需要家のニーズを探り出し,困っていることを解決するための提案を持ちかけて,工事案件を作り出し,受注を確保していく活動。⑷ 技術・技能継承の現状と課題 1)技術・技能の継承の現状 ものづくりはわが国における経済の基盤であり,ものづくり技術者の確保・育成が重要である。また,ものづくり経済を支えてきた優れた技術・技能を今後も円滑に若年者に継承していく必要がある。 こうしたなかで,平成20年から団塊世代が65歳を迎え,順次退職し,これまでのベテラン技術者が培ってきた技術・技能をどのように継承していくかが問題となっている。 この問題については,危機感を持ちつつ,優れた技術・技能の伝承者である団塊世代から継承者である若年者に対して,円滑に継承されるよう行政の支援のもと,企業で取り組みがみられているが,人材不足という大きな壁によりなかなか進まないのが現状である。 2)電気工事士資格の状況 電気工事士法では,「電気工事」とは,一般用電気工作物または自家用電気工作物を設置し,または変更する工事と規定しており,この工事に従事するには,原則として電気工事士の資格が必要となっている。 国家資格として第一種電気工事士と第二種電気工事士の資格があるが,より優れた技術を有していることの指標となる第一種電気工事士の試験を電気工事業界に属している方が受験する人数の減少が表1よりみてとれる(第一種電気工事士については,試験合格後資格取得までに一定の条件あり)。 一方で,第二種電気工事士資格の合格者は,増加傾向にある(表2)。電気工事士資格取得に対する上させる取り組みがなければ,高品質施工を望むことは難しい。中小・零細企業にとっては,社員教育を行う時間を取ることも難しい現状のなかで,いかに高品質施工のために取り組みをしていくことが課題である。実践報告

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