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―伝統的建造物に用いられる栃木仕様耐力壁要素の性能評価―1.はじめに関東職業能力開発大学校 建築施工システム技術科小山工業高等専門学校 建築学科関東職業能力開発大学校 建築科       栃木県栃木市や茨城県桜川市真壁など東日本にある歴史的町並みでは,現在でも見世蔵(店舗兼住宅として使うことを目的とした土蔵塗りの建造物)や土蔵をはじめとする建造物が並び,歴史的風景を残している。また,これらの地域は重要伝統的建造物群保存地区(以下,伝建地区)に選定されているが,平成23年に起きた東日本大震災によってそれらの建造物にも甚大な被害が生じている。 それを受けて同年から小山工業高等専門学校(以下「小山高専」という)ならびに民間企業で組織される「とちぎ蔵の街職人塾」らとの共同研究により,土塗壁の耐力壁の水平抵抗要素の性能を把握するために,栃木県で主に使用されている土の物性試験,土の圧縮試験,木造民家用真壁の壁せん断試験など構造的要素について検証してきた。 この取り組みは平成24年より3年計画で科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)の事業として,小山高専横内氏が研究代表者を務める「伝統的建造物群保存地区における総合防災事業の開発」(以下「伝建地区防災研究」という)の設計技術開発の一部である。本報告では,共同体制と平成25年度の成果の一部を紹介する。2.共同体制 伝建地区防災研究は「とちぎ蔵の街職人塾」をはじめとする民間企業団体や栃木市,桜川市といった-1-行政,さらには小山高専をはじめとした教育・研究機関によるメンバーで構成されている。最終的な目標は地域の方々を中心とした自主防災体制の構築,持続可能な社会・施策の創造,修理・修景の設計技術体系の構築,建造物の災害回復力の強化である。3年間のスケジュールは自主防災,持続社会,設計技術,災害回復力の大きく4つの目標から構成され,その中の設計技術目標の土塗壁の性能確認,土塗り壁の補修・補強工法の開発と効果に関する大半の検証は関東職業能力開発大学校(以下「関東能開大」という)の設備を使用して実施している。 土塗壁の耐力は壁の長さ・下地材や土の性質などから構成されており,施工される地域によりその仕様はさまざまである。(公財)日本住宅・木材技術センター(以下「住木センター」という)の「土塗壁・面格子壁・落とし込み板壁の壁倍率に係る技術解説書」に大まかな仕様が示されているが,実情は施工する職人の経験則に基づき施工される部分が多く,強度的性能を定量的に示すことは困難である。また,土蔵壁については知見が少なく,さらにその修復方法に対する強度性能評価は,ほとんどなされていない。 共同研究において強度的評価を関東能開大で実施してきた理由として,実験機器の充実があげられる。関東能開大居住系では壁の面内せん断試験機(図1),接合部試験機(図2),土粒子密度試験などの土の各種物性試験器具(図3),土の圧縮試験(図4)など強度性能評価に必要な各種試験機器が整備されている。 2階建て以下の木造住宅の構造設計手法として慣他機関と連携した取り組み1  他機関と連携した取り組み1山之内 隆志横内 基鶴田 暁財津 拓三共同研究を通した他機関との連携

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