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1回,第2回目の金型造形部門で金賞を受賞した㈲日双工業のクワガタやスズメバチの作品は足の一本一本に至るまで本物を忠実に再現していて,見る人に驚きと感動を与えた。 図1は,第6回(2009年)金型・造形部門で金賞に輝いた作品「ヘルメット」である。これを製作したのが,㈱大だいしん槇精機の大町亮介社長が率いる技能者集団である。 大町社長は,2005年に30代初めの若さで3代目に就任した新進気鋭の社長である。今回,大町社長にインタビューする機会を得たので訪問させていただいた。大槇精機は,もともとホンダ・レーシングの試作部品や航空機部品等の削り出しを得意とし,3軸マシニングセンタによる美しい仕上がり面には定評がある。 大槇精機は金型屋ではないこともあって,5軸加工機の導入は他社よりも遅かった。2008年に初めて5軸加工機を導入した。「後発で5軸加工機を導入するからには,これまでの加工をひっくり返すような取り組みに挑戦したい」とのことから,5軸加工の本場であるヨーロッパの展示会に出展することにした。題材は,ホンダのレーシングバイクの試作に関わっていることから,迷わず「ヘルメット」に決定した。5軸加工の限界に挑戦するために何度も設計変更を行っていた頃に,切削加工ドリームコンテストがあることを知り,並行して日本のコンテストに応募することになった。 作品はオフロード用の実物大ヘルメットを題材に,カッコいい車のモチーフを取り入れたとのこ-36-と。120㎏のアルミ塊から3.6㎏の作品を,5軸加工機で削り出した大作である。アルミニウムの金属が放つ美しい光沢が重量感を与える。金属であるにもかかわらず,内側はやわらかい質感を感じさせるように削っているため,思わずかぶってみたい衝動に駆られる。 ところで最近の加工機は,高速切削機能により切削力を非常に少なく加工できる。さらに,5軸加工の機能によって,付け替えの段取りを大幅に減らすこともできる。それでもビビらないように押さえるには工夫を要する。「ヘルメット」の作品を間近で見て驚くことは,どこを押さえて加工したかがわからないことである。切削のつなぎ目もわからない。美しい仕上げ面に定評があるだけに,押さえ方は秘中の秘である。 「ヘルメット」はドイツOPEN MIND社の「2010 CAM AWARD」も受賞した。その後,同社から2013欧州国際機械見本市(EMO)への出展オファーがあり,新作にチャレンジすることになった。題材は,出展会場がドイツ・ハノーバーであることからヨーロッパの権力の象徴である「王冠」に決定した。図2は,材料費60万円,工具480万円分もかかって製作したチタン製の王冠である。ちなみに工具はメーカーから無償で提供されたとのこと。 「ヘルメット」に比べ「王冠」のフレームは細くて薄い。しかもチタンはアルミよりもはるかに切削性は悪く,ビビりやすい。図3は「王冠」を下から写したものだが,内部はほとんど空間であることがわかる。しかも,見えない底面までもきれいに仕上図1 アルミ製「ヘルメット」技能と技術 3/2014図2 チタン製「王冠」

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