3/2014
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 職業能力開発事業,その中で中核を成す職業訓練校における役割は,明確な意志を持って入校した生徒に対して所定の職業スキルを習得させることである。そのゴールである就職獲得に向け,生徒はもちろんであるが,指導員・職員も最大限の支援を惜しまない。 職業訓練校を評価する尺度としては,入校率と就職率の2つがわかりやすい。どちらも数値で示され,客観的に判断しやすい特徴を有する。ここでは,本誌の特集テーマである就職率に関して考察する。 まず,就職率に関係するさまざまなファンクションを考え,次に就職支援のサービス機能の価値分析を行う。就職に向けては,就職観が大事である,との仮説を立て,その仮説を実証するため,関連データからの分析を試みる。今後のために,就職支援員に求められる資質と能力についても言及する。 就職率は,入校者に対する就職を決めた人の割合である。これを式に示すと, 就職率=就職者/入校者  ………………… ⑴ 就職を目指す入校者,就職者のファンクションを次のとおり設定する。 入校者=f(年齢,入校時の能力,応募倍率)  …………………………………………………⑵ 就職者=f(訓練能力,校求人件数,就職活動)  ………………………………………………… ⑶ 就職環境を取り巻く背景として,次の3視点をファンクションとしてとらえる。 就職視点=f(生徒側,求人側,職業訓練校)  ………………………………………………… ⑷ ⑴式から明らかなように,就職率を高めるには,入校者を一定とすれば,就職者を1人でも多く出すことに尽きる。 就職率を上げるため,職業訓練校ではさまざまな取り組みを行っている。組織全体では,就職活動の全体計画の立案,就職会議等での進捗確認・解決すべき課題への取り組み,業界関連団体等への求人要請,ハローワーク等外部機関との連携,就職時期に合わせた合同会社面接会,科独自の会社説明会,求人拡大のためのダイレクトメール,新規求人開拓に向けた企業訪問,求職者の就職先候補の見学,訓練カリキュラムに組み込んだキャリアコンサルタントの実施,未就職生へのフォローなどが挙げられる。 ほかにも,主に指導員や就職支援員が行うものとしては,企業からの個別求人相談,訓練校求人情報の入手・分析,ハローワーク等外部からの求人情報の入手,職業講話,求職者に対する職務内容等の職業相談・応募書類の添削・面接指導,就職後のフォローなどがある。 上記の取り組みを⑵~⑷式に当てはめ,就職に的を絞った入校者と企業求人側の思い,職業訓練校側の思いをまとめてみた。調査研究報告東京都立城南職業能力開発センター工藤 孝之-29-1.はじめに2.就職率に関係するファンクション就職率向上に関する就職支援からの一考察

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