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種職業検査の結果では個人内差に注目したり観察法的な活用を行う。以上を考慮し,障害に応じたコミュニケーションの特徴や個別性を配慮したキャリアカウンセリングを重ねて進める。 障害種別ごとに簡単にポイントをあげてみる。 身体障害のある人はハード面の配慮に注目が行きがちだが,実は自身のキャリアについて悩む人が多い。むしろ必要な支援はそちらのほうかもしれない。先天性の障害と中途障害の方ではキャリアについての意識も大きく異なる。中途障害の人は受障し回復のプロセスを経る過程で,幾度となく人生の喪失感や焦燥感を感じながらも自身のキャリアの再構築という大仕事に取り組まなければならない。 知的障害のある人への支援は知的レベルや社会経験などにより大きく異なる。そして支援者には,その人の理解に応じたコミュニケーションが問われる。生育過程で周囲がものごとを決めてきた経緯の方が多く,支援者の期待に応えようとする傾向があるため本人の意思や自己決定を引き出す支援側のスキルが要求される。また,知的障害のある人は言葉の理解や抽象的な思考が苦手な方が多く,カウンセリングは難しいと考えている人もいるが決してそうではない。緊張することのない環境でその人なりの言語化を支えると意思や自己決定を引き出すことができる。また身の回りの小さなことからの自己決定を大事にすることなどで自己肯定感が少しずつ醸成される。 精神障害のある人の就労支援では定着率の低さが課題になっているが,その多くがキャリアのつまずきと密接に関係している。症状が安定し就労(復職)しても,しばらくするとキャリアのことで再び悩むことが多い。障害者枠では能力と業務のミスマッチや障害というアイデンティティへの違和感などがあり,それが原因で離職してしまう方や再び健康問題に発展する方もいる。開発的なアプローチと治療的なアプローチの丁寧なキャリアカウンセリングが必要だと感じている。また,支援者は疾病よりもその人全体を見ることが重要である。 発達障害のある人については,本人を適応させるよりもその人に周囲を合わせるほうが早い。その人技能と技術 2/2014-6-キャリア支援のなかで支援者が意識すること 障害のある人の支援では,支援する側とされる側の非対称性が潜んでおり,例えば支援者の意向をくみ取り行動化してしまう傾向や過剰に適応するタイプの方には心を配る必要がある。 障害者雇用枠で働く場合は,一般の雇用に比べ待遇・条件やキャリア形成の機会など大きく異なる場合が多く,一人ひとりが自分らしい働き方を見つけていかなければならない。その際に自ら意思決定をして進めてきたかはとても重要となる。支援者は支援において保護的・指示的な心理が優先することがないように支援者側の自己理解が不可欠である。 また,障害のある人のキャリアカウンセリングでは治療的なアプローチと開発的なアプローチのバランスが重要である。SSTなどの適応訓練や症状の管理が中心だとやる気は起きにくい。その人がどうありたいか,どんな自分になりたいかなど強さや動機づけを引き出す関わりが重要である。対象者との温かい関係のなかで,自分の思いを言葉にできる機会を提供して主体性を引き出していく,そのようにコミュニケーションの配慮と非対称性に気を配りながら進めることはキャリアカウンセリングの応用編とに合った環境の職場を探すか,周囲が理解し許容する発想のほうが有効である。一人ひとりの特徴は多様性・個別性があり職場(環境)とのコーディネート力が問われる。キャリアカウンセリングでは丁寧に生活歴や職歴を聴取し,その人に合った環境を一緒に考える。また,自分の特徴や苦手な環境についての自己理解を支える。本人の気づきを大事にするために,その人の自分研究に付き合うイメージがよい。マッチングのポイントは身体への緊張感が少ない職場環境と得意分野の業務内容,苦手なことを少なくする,障害の特性である生真面目さや深く掘り下げることなどが生かされるとよい。さらに,職場でのコミュニケーションの不利などを際立たせない配慮や,困ったときのヘルプの体制があるとよい。そのほかに独特の感覚過敏への配慮,周囲の理解(ストレスを軽減してくれる緩衝要因になる)があるとよい。

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