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<参考文献>(事例1:青森ヒバ油の場合) 青森ヒバ(一般名としては,“ヒノキアスナロ”として知られている)は青森県に全国の82%以上が生息し,なかでも,津軽・下北の両半島に集中して分布している。全国の青森ヒバ材の資源量は1613万m3で,その97%が国有林である。現在,毎年約3万m3が伐採されているが,伐採された木は製材所で加工され,主に建築用材として利用される。その製材過程においてオガクズなどの廃材が製材量に対して約20〜30%発生する。そのため,製材量の多い青森県では,大量に発生する廃材の処理は深刻な問題である。このような背景から,大量に発生する青森ヒバ廃材から青森ヒバ油を抽出し,その有効利用の開発に取り組んだ。また同時に抗菌・防虫成分を取り除いた廃材を堆肥化し,更に森林に還元することにより廃材の処分を行う青森ヒバ廃材リサイクルシステムを確立した。(事例2:ウッドセラミックスの場合) さらに,ヒバ油抽出後のオガクズのもう一つの利用方法として炭素材料への変換を行った。また,炭素化のときに発生する熱分解物としての木タールから減圧蒸留して得られる木酢油を有効利用することで青森ヒバ廃材から始まり,青森ヒバ油,ウッドセラミックス,木酢油と環境調和型材料が得られ,循環型システムが,構築できた。特にウッドセラミックスは,木質材料を,炭焼き技術を発展させた精密技能と技術 4/2013おかべ としひろ略歴1977年4月 職業訓練大学校木材加工科入学1981年3月 職業訓練大学校木材加工科卒業1981年4月 東京農工大学農学部農学研究科修士課程入学1983年3月 東京農工大学農学部農学研究科修士課程修了1984年3月 東京農工大学農学部農学研究科特別研究員1984年4月 青森県工業試験場漆工課 技師1999年4月 青森県工業試験場漆工課 漆工部長2001年4月 青森県工業試験場漆工課 漆工部長 (統括研究管理員)2003年4月 青森県工業総合研究センター 環境技術研究部長(統括研究管理員)2004年4月 青森県工業総合研究センター 素材技術研究部長(統括研究管理員)2005年4月 青森県工業総合研究センター 研究調整監2009年4月 地方独立行政法人 青森県産業技術センター弘前地域研究所 所長2010年4月 地方独立行政法人 青森県産業技術センター 八戸地域研究所 所長2011年4月〜現在  地方独立行政法人 青森県産業技術センター 工業総合研究所 理事-2-1)岡部敏弘(監):木質系炭素材料ウッドセラミックス,内田老鶴圃(1996).2)岡部敏弘ほか:科学技術総合研究費 地域先導研究成果報告書,61〜72(2001).兼所長な環境制御下で焼成することで,木炭の欠点であったひび割れや形状の狂いを解消し,工業用素材としたのが多孔質炭素材料である。「ウッドセラミックス」は青森県産業技術センターが独自で開発した工業素材で,建築廃材や古紙,リンゴ搾り滓,オカラ,家畜排泄物,生ゴミなどを細かく粉砕し,これらをプレスして板状にした物を原料として使用することもできるので,増え続けるごみ問題の解決の糸口として期待されている。ウッドセラミックスは,廃材やあるいは木質材料を主原料とし,原料採取から製品までの製造プロセス,更に寿命の終わった製品のリサイクルを含めた処理に至るまでを考慮したエコマテリアルである。また,主原料の木材・木質材料は,人間が植林,育成,伐採等を計画的に行う限りにおいては,永続性が保たれていることから,ウッドセラミックスは,自然と共存した持続可能な材料である。これらエコマテリアル(環境調和型材料)を活用して循環型社会の構築の研究開発を行うものである。 今後は,環境にやさしいモノづくりによる循環型社会の構築が,強く求められているので積極的活動を推進していきたいと思います。

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