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———グループメンバーの自立——————グループ力の飛躍——— 日本の社会はグループメンバーに「和」の心がありさえすればグループ運営がうまくいくと思われています。しかし「和」だけでまとまったグループでは,グループを大事にするあまり,メンバーが考えなくなり,判断をしなくなり,かえってグループの力を発揮できなくなることがあります。まずメンバーの自立を図らなければなりません。ただしメンバーは自立しただけではいけません。しっかりと自立をしたうえで,次はグループを考えて行動することが,ぜひとも必要です。 自立のレベルですが,経験上モノつくりの現場では高校の物理の範囲が理解できていれば技術的議論に加わることができ,専門知識などは人に聞くかインターネットのデータベースで間に合わせることができます。ただし「知識を知恵に」しておくことが大切です。これは知識がどれだけあっても各論にすぎず,とっさの判断には使えませんが,知識をうまく噛み砕いて「知恵」という概念にすると,とっさの判断に役だつようになります。つまり知識を覚えるのではなく,それを理解しマスターする過程,すなわち「知恵」という概念にすることが大事なのです。自分が実際にやってみると「ああ,こういうことだったのか」と理解できます。理解できたということは非常に大きな手ごたえになります。心が躍ってきます。そして新しい発見があるとまた次も頑張ろうと前向きな気持ちになれます。課題実習で成功体験を重ね自信をもって仕事に取り組めるようになりましょう。そうすれば仕事がおもしろくなってくるでしょう。 自分自身を振り返ったとき決断すべき場面で決断したことを思い出してみてください。 過去の経験から得られた概念に基づき決断をしているはずです,またその決断は最適ではないにしても,当らずといえども遠からずの範囲に入っているのではないでしょうか。私の体験でも70〜80パーセントはなんとかなった範疇に入っています。また,「決断」まで強くなくても,世の中の仕事では選択を迫られる機会がどんどん出てきます。このと技能と技術 1/2013-2-(「おもしろい」と感じたときいい仕事ができる) 発展を続けるモノづくりは,設備投資をして優秀な人材をそろえるだけでは実現しません。グループ力を飛躍させるグループ運営が必要です。グループ活動とはメンバー1人ひとりでは実現できないような高い目標を,自立する多様なメンバーで実現しようとすることです。メンバーの自立度がいかに高くても集まっただけではグループ力を飛躍させることにはなりません。メンバーはグループに支えられ,そのメンバーがグループ力を飛躍させるのです。本校での「標準課題」「開発課題」はこのグループ運営の実習にほかなりません。最初は戸惑いがあるかと思いますが,先を信じ,つらくても目標に向かってグループで取り組みましょう。それを達成したときにみんなで分かち合う喜びは口では言い表せないほど大きいものです。体験した者にしかわからないといっても過言ではありません。この喜び,楽しさを表題のように表現しています。本校のように課題実習としてグループ運営を行いその成功をメンバー全員が体験することは大きな自信になります。企業でも,グローバル化の今,「新しい価値」を求めてグループの飛躍にチャレンジしています。あのアップルのリーダ,スティーブジョブスの音楽プレーヤー(iPad)やスマートフォン(iPhone)などはグループ飛躍の成功例だといわれています。き大切なことは「決断」を先延ばしにしたり,避けたりしないことです。決断には必ずリスクを伴いますが,日本の社会はまだまだ「和」の比重が高い社会です。リスクを負わない人がいる半面で,リスクだけ負わされている人もいます。決断を下さないでリスクを冒さないほうが当然減点がありませんが,リスクを回避してばかりいると,決断を下せる人が生まれてこなくなります。目標があってこその決断です。リスクを冒しても決断を下す人が育たないと,社会も企業も現状の打破にはならないでしょうし,現状維持しているつもりでも世の中が進む分、維持ではなく後退していることになります。

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