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3.指導理論の実践方法2.3 「見える化」について3.1 標準課題の指導での「見える化」 ⑴ 指導方法の概要 指導計画は,2.1に示したように,通常は事前に  レベル4.Results:組織への貢献度 このレベル1は,学生による授業評価アンケートの類が該当する。このような評価法は,上記基礎理論には明示されてはいない。最近各方面で用いられている。レベル2は,上記基礎理論の中の訓練評価を行うことに該当する。ここでは,学生に対する訓練という観点から,レベル3,4は馴染みにくいので検討対象から除外した。ここでは,このレベル1,2の実施例などを中心に考察する。 例えば,「ここに三角形の図がある。」と言うとそれを聞いて,皆が同じ三角形を想像するという保証はない。もし,一辺が10センチの正三角形と言えば,皆同じようなものを想像できると思う。しかし△,▽もしくは傾斜した形か,となるとやはり全員同じ正三角形を思い浮かべるとは限らない。このとき正三角形を描いた図を示せば,それを見た人全員が情報を共有できる。情報が曖昧で,客観性に乏しければ,そのような情報を共有したとしてもそれは良質な情報とはなりえない。情報自身は,図でなくても皆が納得できる客観性があれば文書でも,数値でも良質な情報となり得る。 ここで「見える化」とは,このように良質な情報の共有を可能とし,客観的な評価を可能にする可視化の方法論と考える。特に,学生の訓練という現場では,学生自身の指導前の状況把握「見える化」(入口)を行い,終了時の満足度・到達度などによる評価「見える化」(出口)を行う。この出口の情報が有効なものであれば,学生自身の到達度の理解が可能となり,励み・反省の材料となる。また,次年度の訓練方法の参考となる。つまり,学生と教官が有効に活用していけるように,良質な情報を顕在化させることが「見える化」の本質と考えている。-29- ⑵ 標準課題の評価 Kerkpatrickのレベル1の満足度は,今まで,標準課題については,毎年,最終日に学生へのアンケートを実施し,翌年の内容を決めるための参考としている。Kerkpatrickのレベル2の到達度については,この課題がグループ作業を主要テーマとしているため,グループによる最終作品を評価することが簡単明瞭である。各グループが1つのシステムの1部分を担当し,最後に全グループが持ち寄って統合し,1システムを制作していた時期もあったが,そうするとグループごとの客観的な評価が困難になる。 そこでここ数年は,4グループに分け,各グループに同じ課題(仕様が若干あいまいで,多様な解釈ができる課題)を与え,完成品は,相互に他グループに検査してもらうようにした。作成する。この前提として,受講生は皆同じような経験・訓練・学習レベルにあるという仮定がある。しかし,応用課程の場合は,標準カリキュラムはあるが,各短大校から多様な経験・訓練を経て入学することが前提である。このため,3年生に対する標準課題の訓練を行う場合,全員の短大時代の学習状況を把握しておき,皆のレベルを一定水準に持ち上げるような指導内容としなければならない。このために,初日にC言語の宿題を数枚課している。その宿題の提出状況をもとに,学生の状態を把握し,その年のカリキュラム構成を決めている。 この初日の宿題から,C言語の基礎,応用力,キメ細かさおよび忍耐力などが把握できる。キメ細かさは,コードを机上できちんと追い,正しい解答を述べているか否かにより判断する。忍耐力について評価できるとは,最初は考えていなかった。しかしこの課題を課してみると,学生が,最後まであきらめずに課題を解いてくるか,途中から白紙のままで提出するかなど,個人およびその年の集団としての傾向もある程度把握できることに気がついた。 このようにして,その年の状況を把握し,その年の学生の目線に沿った内容での実習課題を与えるように心掛けている。実践報告

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