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塾講師中川 祐一 天災でも人災でも,災害は不意に突然やってくる。「備えあれば憂い無し」と言うが,災害に対する役所の体制づくり,地震・水害・山火事などのハザードマップ作成および災害時の救援物資の備蓄といったことは,もちろん怠りなく準備しておかなければならないのは言うまでもないことであるが,果たしてそれだけで準備は万全と言えるだろうか。 そこに足りないもの——それはやはり,災害時に指導的役割を果たすことのできる人材——すなわち災害についての現場の「専門家」が必要になってくるのではないだろうか。そこでこの際,新国家資格「災害対策士」(仮称)の創設を提案する次第である。 しかし,この「災害対策士」という資格をめぐっては,「災害」というものの分類があまりにも多岐にわたっているので,せめて,自然災害専門の「災害対策士」と人災専門の「災害対策士」の二種類にあらかじめ分けておく必要があると思う。そして,災害発生時には,天災チーム,人災チームというふうに,常に数名から十数名の規模の有資格者ばかりのチームを結成して活動するものとし,そのうえで,警察・消防・自衛隊など,復旧作業などにおける従来の災害対策チームとのより強固な連携を図るのはもちろんのこと,医師・看護師および心のケアを担当する臨床心理士をはじめ,民間資格の防災士や気象予報士,建築関係の諸資格の人たち(建築士・建築設備士・測量士・土木施工管理技士など)や電気関係技術者からコンピュータ関連技術者に至るまで,従来どおりのそれら諸関係者を新たに総合的に束ね,その場その場に対応して的確かつ迅速に指示-35-を出すことのできる,まさに「災害時のエキスパート」と呼べるものである。 また,今後はそのための養成機関の体制作りのほうももちろん急務であり,大学において(主に理系の)災害対策専門の大学,学部,もしくは学科を新設し(関西大学などは2010年4月,高槻ミューズキャンパスにて「社会安全学部」「大学院社会安全研究科」をすでに発足させた由),また同時にいろいろな専門知識を兼ね備えるために,災害対策に特に必要と思われる関連学問を重点的に学べるように,他の諸学部・諸学科とも単位を互換できる制度を設け(場合によっては他大学の特色ある学科とも連携を図る),卒業と同時に国家資格としての「災害対策士」の受験資格を取得できるように取り計らわねばならないと思うのである。 何れにせよ,「災害対策士」の真の目的とは,災害時に人命救助から避難誘導(避難ルートマップの作成なども担う),果ては人々が緊急時にパニックに陥らないための人心掌握(平常時の災害対策の普及広報活動も含む),デマのコントロールおよび処理に至るまで,すべての災害時の不測の事態を収拾することであり,あらゆる関連機関から独立した別組織で行動し,かつ緊密な連携力と幅広い応用力を必要とする,現場の「指揮官」と考えるのである。提言—来たるべき災害に備えて—新国家資格「災害対策士」の創設を

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