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7.施工手順について況まで立体的な検証を行った。 現場施工についても,事前に立体的な施工シミュレーションを行った。また,この3次元データと現場での計測データを照合し,建方精度の確認を行った。「BIM」がなければ,東京スカイツリーの設計・製作・施工は不可能であったともいえる。 まず初めに,基礎杭の構築を行った。新開発技術であるナックルウォール(節付き壁杭)である。地中に特殊な機械で深い溝を掘る。掘削中に壁面が崩れないように安定液を満たしておく。そして節の部分は,掘削機の羽を油圧で開きながら回転させて壁面の土を削り取った。次に地上でカゴのように組立てた鉄骨と鉄筋を挿入し,コンクリートを流し込んで完成となる。 外側の鉄骨トラスは,下からタワークレーンによって積み上げる「積層工法」で組立てる。一番下の最大の部材は,直径2.3m,厚さ10cmで非常に重量があるため,長さ4mずつの輪切りに分割して,運搬・揚重が可能な最大重量30t以内に収めた。  この鉄骨を溶接するのも大変な作業で,熟練の溶接工が4人一組で3日がかりで行った。ちなみに,160回の溶接線が積み重なっている。このようにして500mまでのトラス構造部分で25,000ピース,重量にして合計32,000tの鉄骨を積み上げた。 現場の地上部分は非常に狭いので,搬入した鉄骨はトレーラーから低層棟の屋上に上げ,そこで荷捌きを行った。ここでは鉄骨に作業用の特殊ユニット足場をセットして,タワークレーンで一気に吊り上げた。こうして上空で足場を取り付ける危険な作業を省いた。据え付けた鉄骨は,三次元レーザー計測の値を確認し,正確な位置になるように微調整を行って締め付け,最後に溶接して固定する。溶接部分は現場で塗装を行って作業が完了する。役割を終えた足場は取り外して地上に戻すが,また次の鉄骨に取り付けて繰り返し使用する。こうして効率と安全性を向上させた。外側の鉄骨トラスの積み上げには,668日間を要した。技能と技術 4/2012-32- 最上部のゲイン塔は,これまでのように鉄骨を積み上げようとすると,安全性・精度確保・揚重時間など多くの問題が想定された。そこでゲイン塔については,地上で全体を組立ててから吊り上げる「リフトアップ工法」を採用した(図5)。 タワーのトラス部分の中心には,心柱を設置する空洞がある。これを利用してゲイン塔を空洞内部で組立てる。手順は最上部から下に向かって組立て,一節ごとにワイヤーとジャッキで引き上げて,その下に次の一節を継ぎ足していった。これを繰り返して全体が組み終わると,最頂部まで一気に吊り上げた。塔体の頂部から突き出た部分にアンテナを取り付けながらさらにリフトアップを進め,634mに到達したところでゲイン塔の足元を塔体に溶接して固定した。これにより,施工の安全性や品質(精度),また工期の問題を解決した。 油圧ジャッキは,1台当たり500tの引上げ能力のものを全体で12台設置した。総計では6,000tの吊り上げが可能であり,3,000tのゲイン塔に対してかなりの余裕がある。吊り上げは1分間に5cmのペースでゆっくり行った。ゲイン塔を吊るワイヤーの張力図5 リフトアップ工法

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