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4.設計についてまざまな技術的難題を解決する必要があった。したがって,「東京スカイツリー」は高さが世界一というだけでなく,特別なプロジェクトであった。 設計・監理は株式会社日建設計である。大林組の担当ではないが,スカイツリーを語るうえでデザインや構造も避けられないので,知り得る範囲で概略を説明する。 設計のスタートに当たって,事業主から『時空を超えたランドスケープ』と,『600mを超えたい』という2つが要望されたと聞いている。 こうした要望に応えつつ,「日本古来の技と最新技術に支えられた新しい街のシンボル」を,「強く,しなやかに,美しく」をキーワードとして設計が進められた。 東京スカイツリーの断面形状は足元が正三角形で,上に伸びるにつれて滑らかに円形に変化していく,世界に類を見ない形態となっている(図3)。 立体的に見ると,足元の三角形の頂点から伸びる稜線がわずかに反った形であり,この曲線は日本刀のしなやかさや鋭さ,あるいは城の石垣の力強さを感じさせる。これとは反対に,中間部のふっくらとしたところは“むくり”と言い,寺院や神社の柱を連想させる。このように全体のフォルムは,日本古来の美意識によって構成されている。 また,スカイツリーは見る方向によって姿が異なる。“反り”と“むくり”によって左右非対称に見え,天空に伸びるしなやかでシャープなシルエットとなっている。これは日本の伝統的な美しさと,未来へ向かう立ち姿がデザインに込められている。 スカイツリーには展望台が2つある。高さ350mの第1展望台は「東京スカイツリー天望デッキ」といい,展望ゾーンは3階建てで,レストランもある。地上からは分速約600mのエレベーターにより約50秒で到着する。 さらに上の第2展望台(高さ450m)は「東京スカイツリー天望回廊」といい,高さ445mでエレベーターを降り,ガラス張りでスパイラル状の緩やかな-29-スロープを周って到着する仕組みになっている。 夜はLEDによってライトアップされるが,2種類のライトアップが計画され,一日おきに変わる。1つ目は『粋』というテーマで,隅田川の水をモチーフにした淡いブルーにライトアップさる。2つ目は『雅』というテーマで,江戸の情緒を表現するように,江戸紫と金箔のきらめきを表現したデザインとなっている。照明デザインはシリウスライティングオフィスの戸恒浩人氏によるものである。特別講演図3 断面の変化

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