3/2012
3/49

山形県立産業技術短期大学校 校長横山 正明この人のことば 「モノづくりは人づくり」とよく言われる。モノをつくるのは人であるから,いいモノをつくるにはそれなりの能力を持った人が必要であるのは当然のことである。人以外の動物も植物も機械もモノをつくる。その場合でも,必要な能力や性能を持っていなければ,決していいモノはつくれない。モノには形のあるもの,形のないもの,思想信条やそれを具現化する芸術作品,工業・農林水産業・サービス業などの製品等々,多種多様のものが含まれる。どんなものであれ,いいものは一朝一夕には生まれない。いいものに至るまでには長い年月と地道な修業・試行錯誤・調査・研究などが必要であり,関係する人にはそれをやり遂げる強い精神力が要求される。 最近子どもの理科離れが心配されている。この理科離れは,いろいろな現象を彼らには難解な数学で説明しようとするところに原因があり,さらにこの難解な数学を理解できない,あるいは理解しようと努力できない子どもの精神力の弱さに起因する。この理科離れは日本の科学技術の後れをもたらし,その結果として世界市場における日本製工業製品の地位の低下をもたらす。人づくりは幼い子どものときから始めなければならない。 「人づくりは環境づくり」だと言いたい。環境が人をつくると言っても過言ではないほどに,良くも悪くも人は自らに関係する周囲の人々も含めた環境に大きく影響され,人づくりされる。その最初の事例として,ベンチャー(以後VTと略す)企業を取り上げる。 第二次大戦後の米国において,軍需から民需への転換を図る目的から,雨後のたけのこのようにVT企業が次から次へと出現した。当時起業され今も生き残っている大企業は少なく,HPくらいかもしれ-1-ない。その後も現れては消え,現れては消えていったVT企業は数知れないが,成功した企業も多い。前出のHPのほかに,Microsoft,Fairchild,Intel,Apple,Oracle,Yahoo,Google,そして最近のFacebookなど今をときめく大企業がある。米国ではベンチャーキャピタル(以後VTCと略す)が資金を出してくれるので,起業者は一文も出す必要がない。したがって,金のない貧乏な若者でも,優れたアイディアさえあればだれでも簡単に起業できる。失敗しても自らは一文も損しないから気楽なものである。失敗の回数が多いほど経験豊富だとしてVTCから信用され,さらに資金を出してくれる。うらやましい限りである。米国では理工系出身の優秀な若者は,大企業に就職するのは少数派で,多くはVT起業する。こうしてBill Gates,Steve Jobs,そして最近ではMark Zuckerbergらの若きVT起業者が生まれ,そして大きく成長していく。 日本で成功したVT企業の代表格と言えば,ソフトバンクと楽天が双璧である。両社の社長とも若くして米国に渡り,その地で自由に起業できる環境に慣れ,帰国してごく少人数で起業し成功した。和を尊重する日本では,出る杭は必ず打たれる。若者が成功して大金儲けしそうになると,寄ってたかってダメにする。前出の両社の社長はこのような逆境には負けなかった。また,日本には米国のようなVTCはなく,あるのは損得勘定高い大手銀行系のVTCだけである。日本では理工系出身の優秀な若者の多くは大企業や官公庁に就職し,VT起業する若者はまれである。多数の若きVT起業者が生まれ,大きく成長する環境や土壌は残念ながら日本にはない。 以上のVT関連の話題の多くの出所は,青色発光この人のことばこのの人ことば人づくりは環境づくりから

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る