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1.はじめに2.「非正規雇用」の基礎多様な働き方 雇用者のうち3分の1以上が「非正規雇用者」と呼ばれる人々で占められるようになっています。その割合は,1990年代の半ば以降急速に上昇するようになり,近年上昇スピードはやや緩やかになってきていますが,傾向的に上昇が続いています。 雇用の「非正規化」と呼ばれるこの構造変化については,すでに多くの解説本や研究書が出されていますのでご存じのかたも多いと思いますが,本稿では,あらためて非正規雇用の基礎を整理するとともに,平成22年8月実施のJILPT調査結果から,非正規雇用者がどういう条件や環境のもとに就業しているのかをおおまかに解説してみようと思います。 なお,この3月に厚生労働省の研究会から出された「望ましい働き方ビジョン」という報告書があります。非正規雇用をめぐる課題や政策の方向性を理解するためには最適のものと思いますので,ぜひ読まれることをお勧めします。 「非正規雇用」とは「正規」ではない雇用ということですから,それを考えることは,「正規雇用」とは何かをおさえておくことから始まります。正規技能と技術 3/2012雇用について確定した定義があるわけではありませんが,判断基準として,①労働契約に期間の定めのないこと(無期雇用),②一般に通常と考えられる所定労働時間が設定されていること(フルタイム),③雇用関係と就業関係とが直接につながっていること(直接雇用),の3つの要素をあげることができると思われます。この3要素がすべて備わっている雇用者を「正規雇用者」,いわゆる「正社員」と定義することができます。逆に,3要素のいずれか1つ以上が満たされていない雇用者を「非正規雇用者」ということができます。つまり,「正規雇用」で想定される働き方とは異なる働き方,多様な働き方をしているのが「非正規雇用者」なのです。「非正規雇用」の類型=雇用・就業形態 3要素のいずれが該当しないかによって,非正規雇用を類型に分けることができます。 上記①の「無期雇用」に該当しない働き方は,有期契約労働ですし,上記②の「フルタイム」に該当しない働き方は,パートタイム労働という類型となります。また,上記③の「直接雇用」に該当しない働き方は,派遣労働という類型となります。 この3つの類型は,相互に重なりあってさらに細かな類型をつくります。例えば,有期・無期と所定労働時間とによって,「有期フルタイム雇用」,「有期パート」,「無期パート」という類型ができます。また,有期・無期と派遣労働とでは,「無期派遣労労働政策研究・研修機構(JILPT)研究所長浅尾  裕-14-非正規雇用の基礎とJILPT調査からみた実態

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