4/2011
7/38

7-2 プラスの連鎖反応7-3 訓練生らの感想・「本当に自分が3分で出来るとは思わなかった。」・「良い意味で、全員が集中しているので、気持ちに張りがある。」・「大きな壁があると思えば挑戦したくなる。」・「後半になると意識的に頑張る。」・「皆が集中していると安心する。」7-4 信頼関係の構築8-1 自己啓発8-2 当トレーニングの活用に、時間設定を3分間とした際の基準として、1分2秒×81問=162秒=2分42秒を挙げていたが、これをも超えているのである。参考資料として、訓練生3名のタイム表を添付する。 一般的に、最も計算スピードの遅い第4グループの訓練生は、計算スピードが最も速い第1グループの訓練生らを意識すると思われるが、当トレーニング方法に限り、訓練生らは1つ上のグループを気にかけている様に感じる。第4グループは第3グループを、第3グループは第2グループを、第2グループは第1グループをけん制している。つまり、クラス全体を引き上げているのは、第1グループである。これは、プラスの連鎖反応がクラス内で起きたと考えられる。 以下のような前向きな意見を聞くことができた。 数列の計算を最も得意とする訓練生Mの場合、自分で目標を高く設定し、他の追随を許さぬよう努力をしていた。最終的に1分20秒でクリアするまでになった。九九は全問81問なので、1問1秒もかかっていない計算になる。彼には1分8秒という記録がある。これは、Mが限界に挑む中でクラス全員が彼を励ました結果であり、彼は当トレーニングを通して、クラスメートとの厚い信頼関係を手に入れることができた。彼は、修了間際の実習で少し挫折感を味わった。このことを他の訓練生に話したところ、ある訓練生から「1年間数トレの時間にクラスを引っ張ってきた。Mはいつもみんなに小さな目標を立てやれば、うまくいくと話してくれた。」と励まされた。するとMは、天井を見上げ、涙を流した。掛け算トレーニングの思わぬ副産物である。 当トレーニングにおいて、九九の計算表と時間制限を用いることで、訓練生にとっては今までと全く違った学習環境を設定することができた。それにより指導者がタイムについて言及しなくても、タイムを意識し、訓練生の多くが3分以内に九九全問を終わらせることができるようになった。3分以内に終わらせることができない訓練生についても、ルールを守り3分間物音一つ立てず集中できるようになった。周りの状況に合わせ、自分自身の行動を自身で考えているのである。これは自己啓発とよぶことができる。 当トレーニングを通じ、自主的に考えて動く場面なのか、指導員の指示で動く場面なのかの区別ができるようになったり、周りの状況に合わせ自身の行動を考えられるようになった訓練生も多い。また周囲の状況に身を置くことで思わぬ力が発揮できたり、他の訓練生と同じことができたという成功体験は、彼らの大きな転機になりつつある。 では、なぜ当トレーニングによって、このようなことが起きたのか。それは、今まで述べてきた、「超短期集中」の3分間が功を奏しているからである。訓練生は集中力が持続できないが、短時間であれば、集中することができるのである。 このことを利用し訓練方法を工夫する。例えば、7つの問題を35分で一度に理解を求めることより、1問5分を7回に分けて出題した方が良い結果が得られるのである。他にも、DVDを用いた授業では、DVDを15分間見せてポイントや感想を20分程度でまとめさせるというのが一般的な授業の流れであ8.考察−5−障害者に対する職業能力開発について①

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る