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図1 ハノイ工業大学長(左から3人目)を囲んで−29− 独立行政法人国際協力機構(JICA)はベトナム政府との合意に基づき、2010年1月から3ヵ年にわたる技術協力プロジェクトである「ハノイ工業大学技能者育成支援プロジェクト」を実施中である。筆者は、技能検定の本質や導入手法等の理解促進のために、日本や他国の事例等を用いた助言及びベトナムの産業構造の実態を踏まえた技能検定制度導入の基本方針の決定と、それを踏まえたアクションプランの策定に係る指導を行うことを目的として、2010年9月にJICA短期専門家としてベトナムに派遣された。 ベトナムを含む多くの開発途上国が、「欧州型の資格枠組(EQF:The European Qualifi cations Framework)」を導入しているが、果してこの仕組みが途上国に定着するのであろうか。この報告書により、日本型の海外技術協力の在り方を欧州との比較から述べてみたい。 JICA はベトナムにおいて、多くの日系企業を含む外資系企業の進出が進む中で技能者のレベル向上が重要な課題であると認識されていたことから、機械部門の技能者養成の拠点校と位置付けられていたハノイ工科短期大学に2000年から2005 年にかけて「ハノイ工科短期大学機械技術者養成計画プロジェクト」を実施した。その後短大は格上げされ、現在はハノイ工業大学となっている。 ベトナムでは現在中小企業を中心とした民間セクターの発展が著しく、これに伴い、技能者を中心とした人材の育成及び確保が喫緊の課題になっている。 このような背景から、過去のプロジェクトにおいて一定の成果を収めたハノイ工業大学を対象として、同大学が抱える問題に対して、当機構の持つ「プロセス管理手法」による産業界のニーズ把握方法の導入や職業能力評価制度の導入を目的にJICA による支援プロジェクトが開始された。 図2は、ハノイ工業大学の各課程を示したものである。この大学は、商工省、教育省、労働傷病兵社会福祉省という複数の省が管轄する45,000人の学生数を誇る大規模大学である。 国家職業技能水準は、ドイツから導入された5レベルからなる制度であり、現在その法的整備と実施体制が整えられつつある。欧州型の同制度は、後に述べるような枠組みに取り込まれつつあり、どこを着地点にするのか難しい局面にある。また、これらの制度構築を行うベトナムの官僚組織は複雑で、1.はじめに2.ハノイ工業大学の現状海外技術協力東海職業能力開発大学校 古田 光則 海外技術協力ハノイ工業大学技能者育成プロジェクト

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