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(1)入所者にとっての効果(2)支援者にとっての効果 トータルパッケージを活用した導入訓練では、次のような効果が挙げられる。・適切な補完行動・補完手段の獲得 作業をより正確に早く安定して作業を行うための各自にあった補完行動・補完手段の獲得やその効果が数値的に示されるので、重要性が理解できた。・作業ペース(休憩)の体得 作業中の疲労により発生するミスが具体的に数値で示され、訓練時間の合間に定期的な休憩を取ることによりミスの軽減が数値的に示されるので、休憩の効果や重要性を実感することができた。・適切な訓練時間の体得 自己の障害特性を理解でき、フルタイムでの訓練受講が難しい場合には訓練開始時間を遅らせたり、休息日を設けるなど各自の適切な訓練時間の設定ができた。本訓練でもこのペースを維持する、あるいは計画的に訓練時間を増やすなどの方法により、就労時点において各自に最適な就労形態・週における勤務時間を体得できる。・適切な訓練コースの選定 トータルパッケージでの作業、訓練科の体験を通して、訓練内容、就労後の職務のイメージをより具体化でき適切な訓練コースを決定できた。・障害種別ではない認知障害(脳機能)へのアプローチ 従来から精神障害者・発達障害者の職場定着上の課題として、職場における人間関係(コミュニケーション)が強調されてきたが、トータルパッケージを活用したことにより、認知障害(記憶、注意、感情、思考等)への支援アプローチが、技能習得、職務遂行には有効であることが浮き彫りになった。・成功体験による自信の回復 課題の段階的設定と即時的な正の強化を行うことで、適切な再学習体験ができるとともに、自信の回復、意欲の喚起が図られる。・職員間の共通認識の形成 トータルパッケージの活用により、職員間で共通の支援ツールを活用して客観的なデータに基づき情報を共有したことで、入所者の特性や課題、支援アプローチについて共通認識が形成され、導入訓練から本訓練への移行が円滑になった。 この新たな導入訓練においては、作業結果を客観的な形で本人にフィードバックすることにより、得意なことや苦手なことを自分なりに整理でき、自己認識の促進が図られるなどの効果も得られている。 また、障害特性等により自己の能力面・適性面と訓練レベルに関して大きなギャップがあり、当初は希望する訓練のイメージが抽象的で漠然とした状況であった者が、導入訓練を実施することによってより具体性を増し、客観的に訓練コースを決定できるようになっていることも窺える。 身体障害に比べて新しい環境に対する適応力の程度や障害状況について外見的には捉えにくい障害である精神障害・発達障害・高次脳機能障害について、この新たな導入訓練の対象としている。具体的には、これまでのIT訓練中心の内容からトータルパッケージ(ワークサンプル幕張版)を通じて障害特性を把握、段階的に負荷をかけていくことで、自分の疲労・ストレスをマネージメントできるようにすること、職務・職場を想定した訓練場面で具体的な対処方法(障害特性に応じた補完手段・補完行動)を3.導入訓練の効果4.まとめ−11−障害者に対する職業能力開発について②

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