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6.2 カン・コツの抽出はインタビューから写真1 作業全体写真3 ダイヤルゲージ技能と技術 2/2011写真2 マイクロメータ表1 インタビューの実際 軸の直径はベアリングの内径より100分の数ミリ程度大きく加工されており、ベアリングを加熱膨張させないと組み込めない寸法である。この作業の総括は、軸径とベアリング内径を正確に測定後、適正な寸法差(寸法差が少ないと固着が緩くなり、大き過ぎれば加熱温度が高くなり、ベアリングの焼きが戻り硬度低下を招く)であるかを判断し、必要最小限ベアリングを何度に加熱すれば良いかを求める。その後、ベアリングを加熱し、軸にはめ込むということである。作業手順については前もって出来上がったものをデータで渡すことにしている。手順から制作するとなると、作業手順作りに集中し、本来の目的であるカン・コツが出てこないからこの方法を取っている。2人1組で制作するが、1人がベテラン、もう1人がインタビュアーとなってこの作業のビデオ画像を見ながら質問をしていく。事前にインタビューの要点(視点、視線、動作、時間、視覚、寸法的なもの等)については例題を提示し説明をしている。それでもカン・コツ的な部分は出てき難い。ベテランの動作行動には、長年の経験則により身に付いた感覚やそのノウハウ、またベテラン本人が意図的に明らかにしようとしても困難なものがある。これがカン・コツであり、文章やイラスト、静止画、動画で明らかにすることができれば、ベテランの技能を内から外に出せたということである。 ベアリングの内径を測定するにはシリンダゲージが一般に使用される。この測定器は比較測定器であるので、基準である0点を調整しなければならない。ベテランと経験の浅い作業者では、調整完了までの時間および精度に大きく差の出る作業のひとつである。下記の写真1、2、3は実際には動画であり、一連の作業を見ながらのベテランとインタビュアーとの内容を表1に記載している。 写真1、2、3の動画の時間は全体で1分20秒である。ベテランはこの作業をこれだけの時間で行ってしまう。しかし、経験の浅い作業者が行うと、とてもこの時間ではできない。また精度も良くない。ここでどこにカン・コツがあるか、表1のやり取りの中からを考えてみる。経験の浅い作業者はすぐにシリンダゲージがマイクロメータから外れてしまう。ベテランは外れないようにどうしているか。肘を台の上に置き安定させているというのがある。これもひとつのコツではないか。また、うーんと考えて1秒という時間が出てきている。これも特に意識しないで自然に行っている動作であり、まさにカン・コツの世界である。この無意識に行っている動作はベテランも気が付かないことであり、分からないことである。気が付かないことは教えられないということになる。このようなことを見つける、外に出すことが大きな目的である。交互に1秒間の間隔でマイクロ−4−質問者:どこを見ていますかベテラン:シリンダゲージとマイクロを見ている質問者:同時に見ていますかベテラン:同時には見えない。交互に見ている質問者:どれくらいの時間で見ていますかベテラン:うーん、1秒くらいかな質問者:左右に動かしているのはなぜベテラン:逆回転する瞬間を探している質問者:逆回転するとはどういうことですかベテラン:一直線になっているということ質問者:肘を作業台に置いているのはなぜベテラン:肘を固定すると、安定するから

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