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4.履歴書についてて,就職先の決定は内定を得られたなかから選択させるようにした。 1月になると新卒予定者のハローワークへの登録が可能となるため未内定者に全員登録をさせて,求人票の開拓を行った。ハローワークの求人票については,必要な資格や経験を明記している場合があるが,それであきらめるのではなく,これから取得する意思を表明すること,実習で身につけてきたことを写真集などで見せることで採用の可能性があることを話して活動に当たらせた。 私が最も力を入れたのは履歴書の作成である。ほとんどの学生が,志望動機や自己アピールが書けない。図6に示すように履歴書を書ける・書けないという問題は,学生の授業の成績とは全く関係がないことが明らかになったからである。 これまでにどのような資格を取得してきたのか,どのようなアルバイトをしてきたのか,どのような勉強をしてきたのか,どのような部活をしてきたのかについて話を聞いた。これには,ジョブ・カードが役に立った。このような事柄や出来事から,彼らが経験してきたさまざまなエピソードをこちらがうまく引き出してあげなければならない。 ここでいうエピソードとは,学生が物事に取り組んだときのいわば苦労話である。彼らがどのようなことに取り組み,どのような壁にぶつかり,どのように対処し,どのような結果を出し,どのようなことを学び,それが今の生活にどう生かされているのかを詳細に引き出し,情熱的な青春ドラマのようなドキュメントストーリー仕立てに仕上げることを目指した。この熱いドラマになり得るのは,部活で頑張ったことや,アルバイトで頑張ったことなどになる場合がほとんどであるが,それだけではなく日常生活におけるどんな些細なことでもよいと私は考えている。例えば,趣味のお菓子作りや,バイクいじり,メイクアップ,朝寝坊対策,あいさつなども良いアピールにすることができる。  また,長所・短所で陥りやすいのは,自分の長所や短所の羅列で,いったい何を一番アピールしたいのかがよくわからない場合がほとんどである。このような場合,長所・短所を表す単語を書き出してアピールしたい順を決めておくことが大事である。そして,最も大切なのは,それぞれに裏付けるエピソードをしっかりと作り上げておくことである。特に短所については,それが発揮されないようにどのような工夫・対策をたてて生活をしているのかまで示すことができる必要がある。図7に示すのはそのような話を学生にしながら考えてもらった文章を校正する作業を幾度か繰り返したものである。 そして履歴書には,それらエピソードのエッセンスを記入するよう指示した(図8)。 しかし,このエピソードを引き出すためには長い時間がかかる。その時やったこと,気持ちなどの詳細を忘れてしまっているからである。 このような長い時間とかなりの根気が必要である作業が,通常の就職支援では,最も大事なものであるのにもかかわらず不足していると感じている。 ほとんどの学生は,その会社の企業研究もしないまま,経営理念に感銘を受けた,あるいはホームページで事業内容をみて大変感動した,学校で学ん技能と技術4.1 自己PRについて図6 初期段階の履歴書の例64.2 志望動機

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