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6.今後の課題と展望<参考文献> 工業英語に取り組んできて一番大きな成果は英語教育について学科を超えた協力が生まれてきたことである。1,2年次の英語科目以外に,専門工学科目として「原書講読」の授業があり,卒業研究で英語文献を読んだり英文で論文を書いたり発表したりと専門工学科の教員も英語指導に携わっている。しかしそれぞれの教員が各自の考えでやっており,連携して学生の英語力を高めていくという体制にはなっていなかった。それが工業英検への取り組みをきっかけに協力関係が生まれてきたのである。工業英語が共通の土俵を与えてくれたのである。 多くの方々のご支援をいただき,次第に学内で工業英語への関心が広まった。2010年には工業英語ワーキンググループが発足し,今後さまざまな専門分野の教員が連携しながら学校全体として大きな目標を共有して英語教育を進めていこうとしている。 今後の課題はたくさんあるが,まず次の段階として2つの仕事を進めていく必要があると思われる。1つは教員の共同作業によって,職業大の学生にふさわしい工業英語の教材を整備し,共有することである。2つめは,ヨーロッパ言語ポートフォリオなどを参考にしながら,職業大における外国語学習の1/2011(1) 公益社団法人日本工業英語協会ホームページ(http://jstc.jp/koeiken/koeigo.html)より。ただし,和訳部分は筆者の考えで修正した。(2) 同上。(3) 公益社団法人日本工業英語協会発行,『2010年度版工業英検3級問題集』所収「工業英検実施要項」4ページ,「工業英検審査基準」を参照。(4)日本テクニカルコミュニケーション協会HP(http://www.teptest.com/outline.html)を参照。(5) MACHITORIHaruyo,ASurveyontheMotivationoftheStudentsforEnglishLeaning,職業能力開発総合大学校紀要第35号B,2006年,参照。目標と進路を示す共通尺度となるような独自の言語パスを作ることである。その作業を進めていくことによって,職業大にふさわしい工業英語を読み・書き・聞き・話すの4つのトータルなスキルとして,専攻分野とレベルに合わせて展開できるような体制を作り上げていく必要があるだろう。その際重要なことは,学生が学ぶカリキュラム全体の進行状況に合わせて,学習内容の連携をとっていくことではないかと思われる。そのためには教員同士が他の授業で今何を教えているのかに関心を持って連携を心がけることが大事ではないだろうか。そういった教員同士の生き生きとした協力関係が学生の学習意欲をサポートする上で大きくものを言うように思われる。そしてもちろん教員自身も励まされることは言うまでもない。37

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