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2.工業英語の導入ドキュメントが作成できる」能力,「他人が書いた英文をテクニカルライティングの面から添削できる」能力,および「ネイティブの技術者やライターとドキュメント制作上の問題について討議できる」能力が求められている。 日本工業英語協会が実施する工業英検以外にも,「早稲田大学-ミシガン大学テクニカル・ライティング検定試験」があるが,これは「国際ビジネスに不可欠な実務英語(レター・ファックス・E-mailなどの通信文,論文,スペック,提案書,契約書など)の運用能力」を中心に,「自己の考えや情報を相手に正確に伝達できる能力」,「実社会で最も大切な発信技能」を測る検定試験を行うとされている(4)。 以上のように工業英語またはテクニカル・ライティングとは,実験室や生産現場でのコミュニケーションに必要な英語力,また取り扱い説明書や仕様書,契約書等技術的内容を含むさまざまな文書を実際のビジネスの場で作成したりやりとりしたりするために必要な英語力,さらに研究論文等の読解と作成,研究発表などに必要な英語力など幅広く技術関係の仕事に携わる人に必要な英語力を意味している。そしてそれは職務の遂行と生産性に大きくかかわってくるために,個々人の能力としてだけでなく組織全体の文書作成とコミュニケーションの在り方としても重要性を増してきている分野であると思われる。 英語授業を行うという観点からみると工業英語の特徴は大きく分けて2つあると思われる。第一には,科学,技術,工業に関する用語を理解し,使えるようにしなければならないということである。第二には工業英語にふさわしい,簡潔,正確で多義性を避けた明確な文体を身につけなければならないということである。そして,この2つの要素共にレベルと専門分野に合わせて段階的に学んでいく必要がある。科学技術的な内容を理解していることが英語学習の前提となるので,技術分野の学習との連携が欠かせないことも大事な要素である。また読み・書きだけでなく,聞き・話すも含めて4つがトータルにそろった,英語によるテクニカルコミュニケー1/2011ション能力を身につけていく必要があるであろう。 現在職業大では必修科目として「英語Ⅰ」(1年次),「英語Ⅱ」(2年次)および「オーラル・コミュニケーションⅠ」(2年次),「オーラル・コミュニケーションⅡ」(3年次)の4科目があり,選択科目として「オーラル・コミュニケーションⅢ」(3,4年次)がある。全科目通年1コマである。 英語教室の方針として「英語Ⅰ」では基礎力の確立を目的とし,科学技術英語ないし工業英語の入門的なテキストを用い,工業英検4級を視野に入れて授業を行うこととしている。新入生には毎年基礎力調査を行い,その結果を参考に今年度は「英語Ⅰ」の中に「基礎クラス」を設けている。基礎クラスも基本的に同じ授業方針である。基礎力が不足している新入生がいるので,1年次に英語の基礎を確立することを最重要課題と考えている。「英語Ⅱ」では工業英語の学習を発展させ,工業英検3級を視野に入れた授業を行う。 「オーラル・コミュニケーション」では語彙力を増やし,文法と表現法を理解し練習して定着させることによって会話の基礎力を養い,外国人の先生による授業を通して英語で臆せず堂々と言うべきことが言える力と自信を養うことを目的としている。今後は「オーラルコミュニケーション」の授業でも工業英語を意識し,技術者の現場で必要になるような会話を想定した教材を取り入れていきたい。 以上の科目を専門基礎学科の英語教員が担当し,3,4年次に専門工学科の教員が「原書講読」等を担当している。 工業英語は「英語Ⅰ」と「英語Ⅱ」の授業に取り入れてきた。工業英語導入の先鞭を付けられたのは佐々本誠治元専門基礎学科准教授であるがその後筆者も授業に工業英語を取り入れ,現在では英語教室全体で工業英語に取り組んでいる。工業英語を取り入れたのは,本校の学習・教育目的とカリキュラムの特色に合わせた教材を用いることによって少しでも学生に興味と関心を持ってもらい学習意欲を高め33

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