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6.おわりに5.3 寸法出し5.4 偏芯出し5.5 組立寸法横方向(径)ダイヤルケージ図16 縦,横方向測定用ダイヤル14縦方向(軸)ダイヤルケージ部品③⑤部品①④図17 偏芯出し風景<参考文献> 要求される精度は,組立寸法で±0.02mm,部品寸法の重要な場所は公差で0.02mmである。競技中の室内温度は,24°前後で空調されているが,加工中は切削熱のため部品の温度は上昇する。熱収縮を見越した寸法補正が必要となる。選手は,これまでに幾度も練習を行った実績から,各段階に応じた数ミクロン程度の補正を行っている。また,ミクロンオーダーの寸法を出すため,図16のように縦方向(軸方向),横方向(径方向)にダイヤルゲージを当て切り込み寸法を確認している。 偏芯の難しさは,単にその部品だけを所定の寸法量を偏芯させるだけでなく,それぞれの偏芯角度を同期させなければならない。強いては組み立てや摺動に大きく影響する。必然的に,偏芯を加工する工程順が決まってくる。図17は,部品①の偏芯加工のため,部品③と④と⑤を組み付け,部品⑤の偏芯部分を基準に偏芯出しを行っている様子である。 加工手順は,熱の影響,寸法精度,加工時間,難易度などを要因に各社各選手により異なる。大会は一般公開を前提としているため,競技中,他社の加工工程を念入りにチェックする場面や,選手や指導員同士の情報交換の場面も多々見られる。 競技の終盤に差し掛かると組立寸法出しに入る。組立寸法は,大半が旋盤の縦方向(軸方向)の寸法1)http://www.ginou-nippon.jp「ものづくり立国・日本」次世代フェスタ2)http://www.javada.or.jp/ 中央職業能力開発協会3)第47回技能五輪全国大会2009年 競技課題113p~131p 中央職業能力開発協会であり,普通旋盤では,±0.02mmの精度に仕上げるのは手間もかかるし非常に困難である。さらに,組立位置は,テーパ面の当たりで決まる部分が多く,テーパ合わせの寸法が重要である。したがって複式刃物台の傾きをそのままにし,勘合部品の両方のテーパを仕上げる選手が多い。テーパ合わせの寸法出しのためダイヤルゲージで往復台の位置を正確に決める。課題は組立寸法の配点が多く組立寸法出しに十分な作業時間が取れるかが課題となる。 技能五輪は,ものづくり立国・日本の原動力をみる大会といっても過言ではない。選手の真剣な取り組みや指導員や企業サポート体制などをみると,日本の強靭な技能基盤を感じる。思うように力を発揮できず嘆き崩れる選手もいるが,この掛け替えのない経験をもとに,選手全員が将来のものづくり基盤を支える逸材となるだろう。私としても本大会に習い高度で多様な知識と技能を兼ね備えた“ものづくり現場を担う将来のリーダー”として産業の発展に貢献できる職業人の育成に邁進していきたい。技能と技術

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