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292.技能五輪全国大会1.はじめに中国職業能力開発大学校森  公秀特集 古来より日本は,ものづくり立国として高い技能と技術を有し文化や産業を維持してきた。しかし近年では,中国やインドをはじめとする途上国の急激な経済成長や国内労働力の空洞化,環境・エネルギー問題に伴う産業構造の変化など情勢は厳しく,わが国の基幹産業を成すものづくり分野を担う中核的な人材の確保が技能継承の観点から大きな課題となっている。若者のものづくり離れ・技能離れが進行し,その基盤力の衰退が懸念される。 こうした状況を踏まえ国は,働く人々の有する技能を一定の基準により検定し,国として証明する国家検定制度「技能検定」を実施するなど,技能に対する社会一般の評価を高め,働く人々の技能と地位の向上を図っている。また,若年者ものづくり競技大会,技能五輪全国大会・国際技能競技大会(WorldSkillsCompetition)などを企画し,大会開催地域を中心として,若い優れた技能者による祭典を提供し,技能の重要性・必要性をアピールし,技能尊重機運の醸成を促している。 現在,技能五輪全国大会は,原則として毎年11月に開催され,国際大会が開催される前年の大会は,国際大会への派遣選手選考会を兼ねている。全国大会の出場選手は,各都道府県職業能力開発協会等を通じて選抜された者(原則23歳以下)とされている。 筆者は,45回大会から現在までの3年間,技能五輪旋盤職種の競技委員として参加した。このなかで,鍛錬された高度な技能,選手をサポートする指4/2010導員や企業体制に触れ,ものづくり立国・日本の技能基盤を確認できた。その一部でも紹介できればと思い以下に報告する。 第1回技能五輪全国大会は,第12回国際大会(アイルランド)へ派遣する日本代表選手を選抜するため,1963年5月に東京で開催された。筆者の生まれた年でもある。第28回全国大会までは,東京都・千葉県内を主会場に実施していたが,第29回全国大会(1991年)は,愛知県と中央職業能力開発協会の共催により,愛知県内の各会場で実施された。その後の検討により,技能五輪全国大会を都道府県との共催により開催する地方開催方式が推進され,富山大会(第32回),島根(第34回),群馬(第36回),静岡(第37回),埼玉(第38回),福島(第39回),熊本(第40回),新潟(第41回),岩手(第42回),山口(第43回),香川(第44回),茨城(第47回),その他は東京都・千葉県内を主会場に開催された。48回大会(2010年)は神奈川県,50回大会(2012年)は長野県で開催される予定である。 地域開催の場合は,県内の民・官・国の職業訓練施設が競技会場となり,地域で学んでいる訓練生や一般見学者,これから職業を選択する小中高校生へ広く技能を紹介することができる。また参加補助金などを設ける自治体や地元の企業も積極的に協力している。職種は,機械・金属・電子・建設・建築・ファッション・サービス・情報通信分野などの約40職種である。   ものづくり訓練の現状と課題等について技能五輪旋盤職種に観る鍛錬された若年者の技能

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