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7.おわりに写真15 D社の面接で受験した学生が提示した      実習写真8習した半分も書けていないし,フリーハンドで書いており,内定はやはり難しかったといえよう。 また,別の学生が関西のD社を受験したいといい,面接時に学校内でどんなことを勉強しているか聞かれたとき,スイッチングレギュレータを製作したことを中心に話したいというので,K社を受験した学生と一緒に,同様に勉強した。 面接官に強い印象を残すためにどうすればよいか。製作した作品を持っていくのはもちろんであるが,学生が実習でどのようなことを行っているのか,写真でも見てもらうことにした。実際の実習時の彼の写真があれば一番よいのであるがないので,写真15に示すように試験用に撮って,これをA4サイズに引き伸ばして,実際の作品と写真を見せながら,製作実習の説明をさせることにした。 また,この学生は声が小さく,元気がないように思われるといけないので,担任がグランドに連れて行き大きな声を出す発声練習も行った。 時間をかけて実際に自分が製作しているので,製作過程の説明はできるが,どういう仕組みでどんな動きをしているのか,基本がしっかりと身についていないと,自分の言葉で説明することができないようである。「『準備は良くできていますね』と言われました」と言っていたが,そのニュアンスのとおり内定は難しかった。 5年くらい前に電子技術科から,福山市内の電機1)高周波誘導加熱器の製作 稲葉保:『パワーMOSFET活用の基礎と実際』,P285~302 CQ出版2)力率改善型インバータ蛍光灯の製作 トランジスタ技術 2005年9月号 p235~2423)トラッキング電源の製作 青木英彦:『アナログ回路の設計製作』,p79~91 CQ出版4)AMラジオの製作 鈴木憲次:『ラジオ&ワイヤレス回路の設計製作』,p137~152 CQ出版5)FCCスイッチングレギュレータの製作 トランジスタ技術 2000年5月号 p213~227の製造会社に就職した卒業生に,在学中にもっと勉強しておけばよかったと思う科目は何かと聞いたところ,即座に「電磁気学です」と答えた。やはり電磁気学は,電気・電子系にとってぜひ理解しなければならない重要な分野であり,私もこの製作実習において,電磁誘導現象,インダクタンス,磁気回路,相互誘導回路など何度も繰り返し説明してきた。しかもスイッチングトランスや誘導加熱現象,共振用やチョーク用コイルの話など製作に必要な最低限の範囲である。しかし彼らが自主的に理解し覚えようとする意欲を持たなければ,頭の中を素通りしてしまうだけなのだろう。 動機はどうであれ,電気・電子系の科に入学してくる学生たちに,電気磁気やアナログ電子回路関係で,これは面白いから仕組みや原理を勉強してみようと思わせる教材とはどんな教材なのだろうか。 K社を受験した学生の試験後の感想は,「原理をしっかり深く勉強しておけば良かった」いうことであり,後輩に伝えたいことは,「実習授業をきちんと受けること」であった。 その場にぶち当たってその必要性がわかるが,そのときには,自分の言葉で説明できるようになるくらいの十分な理解をして,覚えるための十分な時間がないのである。 座学より製作実習のほうが楽しく面白いという学生がほとんどであるというより全員といっていいが,その先にあるものにも,十分生かせることをわかってもらい,自ら学習するようになるにはどうすればよいのか,もどかしさが続く。技能と技術<参考文献>

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