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2.予測対象とした技能検定1.はじめに27四国職業能力開発大学校奥  猛文図1 実技課題の課題図特集 技能教育を実施するときに,しばしば技能検定の課題を取り入れることがある。学生にとって目標がわりやすくモチベーションを維持しやすいことが大きな動機であろう。あるいは,指導者側に受検ノウハウが蓄積されていること,実際の採点基準を模した書籍1)があることなどの理由も考えられる。しかしながら,技能検定は受検者の技能を定量的に評価するものではなく,合否を判定するものであるため,技能と採点結果に比例関係があるとは言いがたい。これから,学生においては実感する技能の上達に比べて採点結果に違和感を抱いたり,指導者においては客観的なデータとして利用できないため,指導に長年の経験が必要となってしまうことなどが考えられる。技能教育において効果的にPDCAサイクルを回すためには,技能が定量的に評価できることが必要である。また,個々の技能者が将来に習得する技能量の予測ができれば効果の確認(Check)と処置(Action)を効率的に展開できると考えられる。 本報告は技能量の汎用的な計測および予測技術である。技能検定2級機械加工(普通旋盤作業)の実技課題に技能に応じて合否を判別するしきい値があることを示した。技能を定量的に評価するために品質工学における損失関数を適用することを提案した。さらに,多変量解析を利用したMTシステムを用いて個々の技能者が将来に習得する技能量の予測を試み,データを蓄積することで予測精度の向上が期待できることを示した。3/2010 今回取り上げたのは技能検定2級機械加工(普通旋盤作業)である。この実技課題と採点基準は,技能五輪予選でも採用されている。この課題の内容は不変で,四国職業能力開発大学校においても夏季休業を利用して有志の学生が取り組んでいる。このため技能の習得の過程を得ることができ,技能量の評価と予測の可能性を探るのに都合がよい。 実技課題の内容は,定められた供試材から機械加工を施して規定の形状を作成する。そして,その出   職業能力評価と訓練へのフィードバックについて― マハラノビスの距離を用いた予測精度向上の試み ―個々の技能者が習得する 技能量の予測

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