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 事務所内での作業には,データの作成,資料作成,会議用資料の製本,資料発送作業など,多くの作業がある。 訓練生の就職を考慮したとき,これら多くの作業のなかで,下手間業務の訓練も機能障害を有する訓練生には重要となる。 このため実習室の一角に作業コーナーを設け,「宛名シール貼り作業」や「パンフレットへの修正シール貼り作業」などの訓練を行っている。 これらのシール貼り作業では,3人一組・3組程度で行い,日々の作業を次のグループにまた次のグループに引き継ぎ,リレー方式の作業サイクルとなっている。 シール貼り作業では,丁寧に真直ぐ平行に貼り付けることができれば問題ない。しかし,上肢機能障害を有する訓練生にとって,手の震えなどにより思うように作業できないことがある。訓練生がより簡単にシールを真直ぐ貼れるように,補助具の考案や作業の段取り,そして作業手順を訓練生と一緒に考えていく。そのとき,訓練生同士で相談できる環境も用意するのが効果的となる。 作業の準備をするうえでは,作業スペースの広さも障害者にとっては重要な要素となる。同じ作業場で,訓練生同士が離れすぎると声かけが難しく,近すぎると作業中の仲間の訓練生と体が触れてしまい,作業を妨げる原因ともなりかねない。障害者の作業スペースは,健常者に比べて,十分に配慮する必要がある。 代償手段は,障害の症状に合わせて,それぞれ開発・改良する必要がある。作業の実体験を通して,訓練生は「自分でできること」や「工夫の仕方」も理解できるようになる。そして,実践的な工夫の仕方などを学ぶことにより,作業意欲と作業量の向上が期待できる。 シール貼り作業では,訓練生は単にシールを貼るだけでなく,次のような作業の流れのなかで,データを記録している。 ① 倉庫から修正前のパンフレット,修正シール,包装用紙を作業コーナーに運び出す。 ② 補助具を使って,パンフレットの修正箇所に修正シールを真直ぐ平行に貼る。 ③ 1時間当たりに貼り終えたシール部数を数え,その記録を取る。 ④ 修正シールを貼ったパンフレットは,200部を一束として,包装用紙で包装する。 ⑤ 包装したパンフレットは,倉庫に搬送し保管する。 ⑥ 表計算ソフトを使って集計表に作業結果を入力する。 ⑦ そして,データをグラフ化し,平均作業量を確認する。それらのデータは,報告書作成など,他の訓練にも活用される。 用度品の個数チェックから,カタログ確認,配達・集計作業,そして報告書作成等,ビジネスソフトを活用して資料を作成し,作業を完結する。この作業の流れを体験することにより,訓練生は技能の習得と就業への自信を育てることになる。 この作業は,各グループが日々の作業を次のグループに引き継ぎを行っている。同僚や次のグループのことも考え,事前準備や整理整頓など丁寧さを身に付けることができる。ただ単に,指導員から丁寧さや整理整頓等を口頭で指示されただけでは効果がなく,訓練生同士のチェック事項や申し送り事項など報告し合うことにより,訓練生はお互いに刺激を受け,より丁寧な作業を心がける結果となる。  用度品管理倉庫と修正シール貼り作業コーナーと5⑷ シール貼り作業写真3 シール貼り作業・包装作業2/2010⑸ 作業場間の連携

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