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4.左官仕事の内容 建築における左官の役割は,例外を除きすべて仕上げ作業である。建築されるさまざまな用途によって異なる壁などに仕上げを施すのだが,その施工法には2つの工法がある。〔乾式工法〕 工場生産された合板やクロス仕上げが主な施工法をいう。外部には,サイディングやアルミ製品もある。これらの施工法は,既製品を使用するため簡便で工期も早く直ぐに使用できるという利点があるが耐用年数に問題がある。 内部仕上げにおいても同じことだが,更に結露と化学物質汚染によるシックハウス症候群という問題がある。加えて,火災による類焼の速さで人命が脅かされている。〔湿式工法〕 これが左官による仕上げ工法で,自然素材による材料で施工されるため乾式工法の持つ欠点すべてをホローする性能を持っているが,工期的に少し時間がかかることに欠点がある。 しかし,耐用年数や居住性には数百年の歴史が証明している。その主力となるのが,土壁を中心とする塗り壁である。 京都は,さまざまな色土が採取できることから京壁として全国に知られている。学院では京都ならではで,1年生は土壁の反復練習から始めて効率の良い訓練を行っている。 土壁には,土壁を代表する「土蔵」と「土塀」がある。いずれも昔から人の命を守ってきた歴史があるが,壁の性能として調湿性・耐火性・耐震性が知られている。最近では,CO2削減に寄与する省エネ施工として注目されている。 地方それぞれ採取される「土」はさまざまだが,その土を使用できるように「ならす」のも左官の技44である。米藁などをスサとして使うが,その均し方によって土の強度,塗りやすく割れない壁をつくることができる。 塗り壁の種類〔聚楽壁〕 豊臣時代の千利休に始められた茶道からお茶室が生まれ,茶室の壁の仕上げとして聚楽壁が多く用いられた。聚楽土は,京都独特のもので西陣地区主に秀吉が造ったお土居から採取されるの何かの縁かもしれない。 聚楽壁には,海苔捏ね・水捏ねの2つの方法と鏝による異なる施工法があるが用途によって使い分けられている。〔京壁〕 聚楽土を含む京都で採取された色土で施工される壁すべてが京壁だが,用途によって石灰などを混ぜて使われることがある。 求められる用途や色彩により稲荷土,九条土,白土,江州土などが使用される。仕上げには鏝押え,なで押えなどがある。〔京磨き〕 磨き壁には,色土と漆喰が使われる。<大津磨き>・<漆喰磨き>があり,用途によってどちらかが採用される。昔の人は着物であったので廊下・便所など擦れるところでは磨き壁が適していたのではないかと推察される。〔漆喰壁〕 漆喰ほど多くの用途に使われている材料はない。外部にも内部の仕上げにも使える万能の材料であ技能と技術4.1 建築における左官4.2 土壁の数々

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