2/2010
34/49

5.電磁石を作る指針そのようにはなりません。他の多くの文献でも書かれているように鉄心に鉄などの強磁性体を使った場合,飽和する点があり,ある一定以上の電流を流しても,それ以上に吸着力は上がらなくなります。私が実験した一例を示します。 このグラフ(図4)は,ある電圧からスタートして,吸着が離れた時点での体重計の値をそのつど読んでプロットしたものです。 この場合,2.5Aぐらいからは,飽和してそれ以上は吸着力が上がらない様子がわかります。 電流は電圧に比例して上がりますので,この実験では,実験用の安定化電源器を使い,5Vぐらいから,1Vごとに電圧を上げる方法で行いました。 さて,ここからは実際に電磁石を作る指針についていくつか述べたいと思います。とにかく強い電磁石を作りたいという漠然とした目標はあっても,とりあえずどう作っていったらいいのかということは,かなり難しいことです。なぜなら,「電磁石はこのような形でこう作る」などというものはないからです。使う人によって用途や大きさなどのさまざまな違いがあるからです。 今回は単純に吸着力にテーマを絞っていますが,モータの電磁石のように吸着力と反発力の両方を使うパターンなどもあり,そのような場合は吸着電磁石とは異なり,電磁石とするための構造そのものも全く異なるものになるからです。 今回は,吸着にテーマを絞っていますので,その場合に 1)どれぐらいの鉄心に(太さ,長さ)2)どれぐらいの太さの線を3)何回ぐらい巻いたら(コイル外周を何mmに)4)何グラムの電磁石になり5)何ボルトを掛けたとき,何アンペアが流れ6)何kg(吸着力)ぐらいの電磁石ができるのかを作る前に知ることができる1つの指針を述べたいと思います。ただし,これは,あくまで指針であって,どのような構造の電磁石にするかを決める要素は含まれません。つまり,どのような構造の電磁石にするかはあくまでも,使う人の用途によって各人が決定しなくてはいけないということです。 次に示した表は,上述した要素の1),2),3)ぐらいを入れると4),5),6)が自動的に計算される便利なものです。これにより,目的の電磁石を作る助けになります。Excelを使った簡単な表です。4),5),6)の各項目には,計算式が設定されているだけです。 ただし,電磁石指数のαは自分で設定する必要があります。なぜならば,この指数はどのような構造の電磁石にしたかによって大きく異なるからです。 同じ構造の電磁石であれば,同じαを使って吸着力を推定できます。技能と技術図4 電流と吸着力32 表1

元のページ  ../index.html#34

このブックを見る