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3.吸着力を測定する 例えば,重さが100gの電磁石で,吸着が3kgで外れたとすると,α=3000÷100=30ということになります。もし,重さが1kgの電磁石で吸着が30kgで外れたとすると,やはりα=30000÷1000=30ということになり,この指数でいう限り,これら2つの電磁石の強さは同じということになります。 吸着力が3kgと30kgで,同じ強さの電磁石ということには抵抗があるかもしれませんが,この指数では,そのようになります。むしろこの指数の使い方は,50gの電磁石で吸着力が2kgだった場合,α=2000÷50=40となり,こちらの電磁石のほうが,100gで3kgの吸着力のものより強い,というように使ったほうが理解しやすいかもしれません。50gで2kgの電磁石を2つ使えば当然100gで4kgの吸着力が得られるわけですから,こちらのほうが強いということは明白です。 このようにこの指数αを用いて製作した電磁石を客観的に見ることが,強い電磁石を作る目安になります。 ここで,このα指数を大きくすることが強い電磁石の条件であるということはおわかりいただけたと思います。ですから,このαを上げる努力をすることが求められます。では,αを上げるにはどのようにすればよいでしょうか。式だけからいえば,分母を小さくして,分子を大きくすることになります。 分母を小さくするということは,電磁石そのものの重さを小さくするということです。 このために考えられることは,○鉄心を小さくする(鉄心を使わない)○鉄心の比重を軽くする(鉄より軽い比重の強磁性体を使う)○コイルはたくさん巻かない○コイル線の比重を軽くするとなります。しかし,これらはいずれも一般的に強い電磁石を作るためのファクターに反するものばかりです。コイルの比重を軽くするには,電気伝導率が良くて比重の軽い金属線を使えばよいということになりますが,これも,銅線以外に適当なものは見つかりません。 唯一,重量を増やさずに増やせるファクターは電30流を多く流すことです。超伝導磁石がこれに当たるのだと思います。ただ,超伝導磁石は別の面で一般的ではありません。超伝導磁石でなく,多くの電流を流すことは,できそうでできません。発熱の問題がありますし,そもそもコイル線を太くしなくてはいけないので,その部分で重量が増してしまいます。 では,分子を大きくすることではどうでしょう。分子は吸着力そのものですから,ここを上げるには,やはり一般的にいわれている強くするためのファクターを上げていくしかありません。 しかし,上げようとすると,分母も大きくなるという矛盾が出てきます。 つまり,ここに試行錯誤の研究が必要になってくるのです。机上の一般論のみで強い電磁石を作ろうとすれば,単純に重い電磁石になってしまうだけなのです。 電磁石が強い,弱いは前述した指数αによってみていくことにします。このために必要となるのが,吸着力です。もちろん電磁石そのものの質量も必要ですが,これを測定するのは市販のデジタルはかり(写真2)を使えば簡単です。問題は吸着力の測定です。単純に,鉄板に吸着させた電磁石をばねばかりに引っ掛けて計ってもよさそうですが,吸着が外れたときに大変危険なので,やめたほうがよいでしょう。では,どうするかということになります。大学や研究機関であれば,引っ張り試験機などがあると思いますので,それを使えば簡単に測定することができると思います。しかし,一般の訓練機関などでは,そのようなものがないので,安価でおおよその吸着力を測定できる引っ張り試験機なる物を作ってみることにしました。 写真1が作成した試験機です。 市販のデジタル体重計(LED表示)に測定のためのアタッチメントをつけただけの単純な物です。 ギアードモータの出力軸にモジュール1のウオームギアを取り付け,φ8のねじシャフトを駆動し,技能と技術

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