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5.訓練用手話表現の開発6.聴覚障がい者とのコミュニケーションに 役だつ機器ります。また,情報処理系の科目なので「説明」「コマンド」「実行結果」など,複数のウィンドウが重なるため,「説明なのかコマンドなのかわかりづらい」「実行結果のウィンドウがどれかわからない」というほかの生徒の声もあるそうです。 この講師は,手話通訳がついている日にも,このように文字情報をつけた訓練を行っていますので,「手話通訳者から見れば余計なことでしょうか」と気にしていましたが,聴覚障がいの生徒にはわかりやすくなる,と手話通訳者からは好評です。 平成22年3月の修了後に,当校の専任手話通訳者と数人の時間雇用の手話通訳者および当校の指導員とで在職者訓練(大阪府ではテクノ講座と呼んでいる)のための手話表現を開発することになりました。 私が手話通訳室にうかがったとき,ソフトウェア「アクセス(Access)」の講座のための手話表現の開発に取り組んでいました。手話表現を開発する予定の用語表は,50音順です。優先順でなく50音順にしているのは,略称を作るときに検討しやすいように。例えば,50音順なら「コントロール」の次が「コンボボックス」になり,「コン(指文字)+ボックス(手話で「箱」と表現)」という表現をした場合,同じ「コン」が頭につく「コントロール」と紛らわしくないか,確認しやすいという理由です。 手話通訳者が日常の手話通訳の仕事で必要と感じた用語を連絡ノートに記入して蓄積した用語について,手話表現を作成します(手話表現が決まっていない用語は,受講している聴覚障がい者と手話表現をそのつど相談して,そのときだけ使っている)。 他のソフトウェアと用語は同じなのに意味が異なり,違う手話表現にすることはよくあるそうです。また,わかりやすい表現にするには,指文字,概念的,映像的,それぞれのバランスを手話通訳者で知恵を出し合って作成します。例えば,「サブフォーム」という用語の手話表現には,指文字でそのまま表現するよりも,①「副(手話)+フォーム(指文字)」②「フォーム」を両手の指文字で「フ」「ム」を同時に表すとかぎ括弧のようになり,「フォームの中にフォームが入っている様子」を大きなかぎ括弧と小さなかぎ括弧で表現する,など,概念的あるいは視覚的な表現を取り入れた方がわかりやすい表現になるということになります。概念については,講座での使用テキストはもちろん,パソコン用語集や,「新しい手話」などの参考書,また,日ごろ接している聴覚障がい者が持っている用語への概念(例えば,「鍵」という用語を表現しても「そこがポイント」という意味でとらえてはくれないかも)なども考慮しています。 訓練では,指文字で表現してから手話表現をして,受講者に伝えてから使用するため,覚えやすい表現であることも大切です。なお,当校の開発した手話表現集には,「簿記の手話」「IT手話」「Webの手話」「CAD製図科の手話」「製版アート科の手話」「テクノ講座の手話」があり,すべて本校の手話通訳者と指導員の協力で作成したものです。 回転灯など,光によって合図する機器が便利といわれますが,現在はいずれの科目でも使用していません。聴覚障がいの生徒も健聴者と同様に,時計,クラスメイトの行動,指導員の身振りなどで状況を判断してくれるので,わざわざ合図する必要があま15写真3 訓練で表示するものをモニタに表示2/2010

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