1/2010
37/61

3.2 知的財産制度・権利の概要●特許権(発明,パテント) 特許権とは,発明を独占的に実施することができる財産的な価値を有する権利である。●実用新案権(考案) 実用新案権とは物品の形状等に関する考案を認める権利である。特許権と同様,特許庁に出願し,登録料金を納付する必要がある。その際,特許権とは異なり,新規性,進歩性などの審査は行われない。●意匠権 意匠権とは工業用デザインを認める権利である。意匠権を取得するには,特許庁に出願する必要がある。願書と図面を提出することによって行われる。生出される無形の資産のうち権利保護できるもの」(3)あるいは,「頭や感情から生み出した創作物」(4)と定義される。つまり,知的財産とはアイデアや発想から生まれた目に見えないものを財産とみなすものであり,自分が創作したことに対する正当な権利を主張できるものである。 しかし,この知的財産は,第三者に模倣されやすいという性質も有しており,何らかの保護制度を設けておかなければ,他人からの侵害行為から財産を守れないという危険が生じる。そこで,この危険に対して制度として保護しようとしたものが,「知的財産権」である。 知的財産基本法では,知的財産を「発明,考案,植物の新品種,意匠,著作権その他の人間の創造的活動により生みだされるもの(中略),商標,商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報」と定義している。 一般に「知的財産権」と呼称されるが,知的財産権という権利はなく,特許権,実用新案権,意匠権,商標権,著作権などのことを総称して「知的財産権」と呼んでいる。以下,概要を示す。1/2010●商標権 商標権とは,商標・サービスマーク等のことをいい,SONYのロゴや,LOUISVUITTONのバッグなどがそれである。商標権を取得するためには,特許庁に出願する必要がある。 なお,商標や意匠出願については,先に申請したものに権利が与えられる「先願主義」が世界共通のルールとなっている。この「先願主義」には異議申し立てが可能であるが,無効審査に2~5年の時間を費やさなければ解決できない。例外は米国であり,米国では真の発明者を保護する「先発明主義」を行っている。●著作権 著作権とは独創性のある著作物のことをいい,例えば,文学作品や映画,音楽,キティちゃんの携帯ストラップ等が該当する。著作者が著作権を取得するためには,登録等に行政手続きは必要ない。著作物性を有している場合には,創作した時点で自動的に権利が発生する。 なお,著作権については文化庁による登録制度があるが,著作権関係の法律事実を公示する観点や,著作権が移転した場合の取引の安全を確保する観点から設けられているものであって,この登録は権利取得の条件ではない。3.3 知的財産権問題の背景●米国 米国では,1970年代までは,特許権の保護よりも独占禁止法の運用についての政策に重点を置いていた。しかし,1980年代にかけて大幅な貿易赤字と財政赤字のいわゆる「双子の赤字」をかかえることに アイデアや発想から生まれた目に見えないものを守り,自分が創作したものに対する権利を,正当に主張する知的財産権に関する考え方には各国の文化の違いが反映されることから,その認識にギャップが生じる恐れがある。例えば,模倣などに対する認識の違いがそれである。以下に米国,日本,中国の知的財産問題への取組みを示す。35

元のページ  ../index.html#37

このブックを見る