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4.まとめ信号A信号BGNDバイアスGND⑵ 送受信機間距離の変化における出力変動図8 挿入した回路図9 実験結果1図10 実験結果232 そこで,キャリア波である可視光の波長のみを通過させる電気的,光学的フィルター等を作成し,この問題の解決を検討した。しかし,良好な結果を得ることができなかった。そこで,われわれは試作機の受信装置側に図7に示すような構造を適用した。このように受信窓と受信デバイスであるフォトダイオードの離隔距離を長くすることでキャリア以外の外部光源の影響を小さくすることができた。 送信機と受信機間の空間的な離隔距離を長くした場合,試作機に可視光信号の出力信号の減衰およびノイズが発生する。これはキャリア波である可視光1)春山真一郎:電気情報通信学会論文誌AVol.J86-ANo.12pp.1284-1291,2003年12月2)中川正雄監:「可視光通信の世界」,工業調査会が空間中を拡散しながら直進するために減衰することが原因と考えられる。その減衰した可視光をフォトダイオードで受信した場合,電気信号の減衰や,直流成分の重畳が起こる。これにより受信機を構成する素子が正常に駆動せず,ノイズの発生や出力の減衰が起こる。 そこでわれわれは,図8に示すような回路を受信機のフォトダイオードと信号増幅用のアンプ回路との間に挿入した。図9,図10に実験結果を示す。図9の信号AがLEDから出力された信号であり,信号Bが送信機と受信機間の離隔距離が長くなった場合の信号である。信号Bには歪みとバイアスが確認できる。図10には信号Bと,図8の回路を挿入した場合の信号Cを示す。この結果より,信号Bの歪みの改善とバイアスの除去が確認できる。これにより,図8の回路が有効に機能し,試作機による正常な信号の送受信と,信号の増幅を可能とした。 無線LANやBluetooth等の無線技術を利用した場合,回析現象により盗聴や情報漏洩が考えられる。そこで本報告において指向性が強く,情報漏洩の可能性が低い可視光を利用したトランスミッタの試作について報告した。 この可視光トランスミッタの試作において,外部光源からの干渉,離隔距離における可視光受信の不具合が課題となった。この問題は受信機の構造を変更することと,電子回路の追加によるバイアス信号の除去により解決した。今後は動作環境の変化に対応した出力の自動調整等について検討予定である。 これらの可視光通信技術は現在,室内照明光を利用した通信,高度道路交通システム(ITS)等に利用されている。今後は光によりデータの送受信を行う光ICタグや,複数の波長の違う可視光を利用したイメージセンサ通信2)が検討されている。技能と技術<参考文献>

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